建築家と工務店とわたし
先日、自宅を新築している友人Aと食事をしていた時のこと。「建築家には予算2000万円で、と言っていたのに、出てきた見積りは2800万円だったんですよ」とA。まあ、ここまではよくある話です。問題はこのあと。
見積書は誰がつくるのか?
- これから、どこで800万円を削減するかを話し合うわけですよね?
- そうですねぇ。Bから見積りが出てきたのが今日なので、ひとまずBの意見を聞いたところですね
- ん? Bさんてのは工務店の人ですよね? 見積書って建築家じゃなくて、Bさんの工務店が作ったんですか?
- そうですよ
- Bさんは、建築家が作成した図面をもとに見積書をつくって、それが当初の予算を800万円オーバーしていたと
- はい
- 超過分が800万円って、もともとの予算に対して40%にもなりますよね? それだけの超過を、設計を変更せずコスト削減することって可能なんですか?
- それをBと話してるわけなんですよ
- 設計変更の必要が生じた場合は、建築家に戻すわけですよね?
- 多分そうでしょうね
- となると、コミュニケーションの相手が建築家に戻って、いろいろ調整して図面を再度作成して、見積書をBさんが再度作成して、コミュニケーションの相手がまたBさんに移って…。ちょっと面倒じゃないですか?
- でも、そういうものじゃないんですか?
- 仮に図面を建築家が引き直すほど変更が必要ないとして、やはり変更は加わりますよね? 800万円の削減だから。施工が始まったら現場を監理するのは?
- 建築家ですね
- その場合、建築家は自分が作成した図面や資料とは微妙に違うものを監理することになるかも知れないということですかね?
- うーん、どうなんでしょうか?
誰がハブになるべきなのか?
なんだか尋問みたいになってしまいましたが、僕が友人Aに矢継ぎ早に質問していたのは、建築家に依頼すれば、「予算を含めた条件を前提とした計画、仕様の決定、図面の作成、見積書の作成と調整、現場の監理、引き渡しまでを、唯一の窓口、つまり建築家だけを通じて実施できる」と思っていたからです。
つまり、コミュニケーションのラインは僕と建築家だけで、その他関係者との必要な調整は建築家がハブとなって実施すると思っていたわけです。
しかし友人Aの話では、設計と監理は建築家、見積りや施工は工務店と、ステージによってコミュニケーションの相手が変わる、つまり施主(友人A)自身がハブになっています。
実は、AとBはとても仲の良い友人同士であり、そのため建築家も「施工の細かい話は当人同士でやればいい」と言っていたそう。しかし、僕の感覚では、その「細かい話」にも建築家が加わるべきなのでは?
建築家に聞いてみた
これが絶対とか、これが一般的といったやり方はないと思いますが、一番重要なのは、素人でありお金を支払う立場である顧客(施主)が、依頼から引き渡しまで、十分な情報を得て、安心して任せられることではないかと。この場合に限らず「誰が、何を、いつやるのか?」「価格は幾らか?」といった要素が、ゴールまでクリアになっていることが、安心に直接的に結びつきます。
少なくとも、友人Aの置かれた状況は、僕にとってはそう感じられなく、非常にストレスになりそう(話を聞いてるだけでもモヤモヤする!笑)。それでガシガシ質問してしまったわけなのですが…。
というわけで、このモヤモヤを取り払うべく、建築家をやっている友人3名にこの話をし、意見を聞いてみました。
契約には2つある
まず、誰とどんな契約を結ぶかをきちんと理解することが肝要。
住宅を建てる際には、設計を担当する建築家と結ぶ「設計の契約」と、施工を担当する「工事の契約」があるとのこと。
注意が必要なのは、建築家がすべての窓口になっているとしても、施工の契約は施主が工務店と結ぶということ。建築家は、施主の代理として設計その他の業務を請け負うという立場だからです(設計代理業務)。
契約の内容を確認する
「設計の契約」には一般的に、構造、設備、意匠、施工方法など、図面を書いて予算内に収まるか検討し、仕様、意匠、設備、予算諸々の変更を受けての調整、工務店との折衝、現場工事の管理などが含まれます。そしてこれは、仕様や予算をクリアした計画ができた時点で「これでいこう!」と双方が合意し、結ぶものです。
ですが、この契約の範囲はケースバイケース。建築家は代理で設計業務を行うという立場なので、施主が「ここはこちらでやります」となれば、そうなるわけです。今回の友人Aのケースは正にこれで、工務店のBさんと友人だということで、工務店との折衝等は施主本人がやる、ということになったのでしょう。
ただし、口頭で。
友人Aは、建築家、工務店と結ぶ契約がどのような内容になっているか、それぞれが果たすべきタスクが具体的に何かを明確にする必要がありそうです。
地方に多い
建築家たちの話だと、友人Aのようなケースに似た、たとえば「知り合いの水道屋を使ってくれ」とか「電気工事類は親戚が働いている店から」といった依頼は地方都市には多いとのこと。自分が生活するコミュニティの中に、多様な職業の人たちがいる地方都市ならではかも知れません。
友人Aの場合は、工務店という施工全般を担当する工事の要に友人がいたので、より話が複雑になっているようです。
ちなみに、僕たちがキャンプハウスを相談している建築家は、ウェブサイトにこのような情報を掲示しています。打ち合わせから引き渡しまでの工程や代金支払いのタイミングなど、大まかでもこうした情報が事前に分かるのは、施主の大きな安心に繋がると思います。
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今回のエントリー、「トラブル!」というわけでは全然ないのですが、興味が出てきたもので一冊。何冊かありますが、業者(建築家、工務店、不動産、弁護士など)側の視点で書かれたものが多いですね。いろんな事例をまとめると、まあ、そうなりますかね。
当初打合せした800万円超の設計が施主の希望ですよね⁈
それならば、施主直営施工をお勧めします。
おそらく当初の設計で800万円程度は落ちるかと思います。
つまり(大げさに言えば)工務店は、職人を呼んできて、それを取りまとめするだけ。その800万円が手数料って考えて見てください。
建築基準法上、唯一、施主が施工主になれるんですから。
僕もそうやりましたよ。
業界は言わないのです。
ほりさん、コメントありがとうございます!
施主直営施工ですね、ふむふむ。
エントリ内にも書いてますが、友人Aは工務店の人ととても仲が良く、この工務店ありきで家を建てることを考えているようなので、おそらく工務店を外すということはないと思われます。友人Aがコメントしてくれることを期待しましょう!笑
私の知人が『施主直営施工』で家を建てたらしいです。その知人は建築に関わる仕事をしていて、業者との繋がりもあったんですがかなり大変だったと言ってました。『施主直営施工』も一つの選択肢だと思いますがデメリットも知りたいですね。
Sさん、コメントありがとうございます!
この記事を公開したあと、友人Aと話す機会がありました。彼の知人にも、設計は設計士、施工は自分で手配したという方がいたそうですが「絶対にオススメしない!」と力強く言われていたそうですf(・o・;) 全体のスケジューリングや、設計士(監理者)や各施工者とコミュニケーションなど、とにかく大変だったとのことです。