「ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル」を読んでみた
明けましておめでとうございます。2020年も楽しくいきましょう!
さて、2020年最初のエントリーはブックレビュー。今後の僕のキャンプの方向性を示すであろう一冊を共有します。
「ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル: サバイバル技術で楽しむ新しいキャンプスタイル」
ブッシュクラフト(Bushcraft)とは
ブッシュクラフト(Bushcraft)は比較的新しい言葉であるためか広く知られた定義がなく、人によって様々な解釈があるようですが、本書に記載された説明を書いておきます。
ブッシュクラフトとは可能な限り軽量・コンパクトな装備で、大自然のなかに寝床を作る、マッチやライターを使わずに火をおこすなど、衣食住に必要な道具や環境を「bush」(茂みなど。広義の野外)で「craft」(作る)遊びです。
—本書カバーより
自然と一体になる方法はたくさんあるけれども、ブッシュクラフトほど自然に、楽しく、遊びながらそれを実現できる行為はないのではないかと思う
—本書前書きより
一言で表すなら、自然の中での遊び、ということになりますね。
書名に「大人の」とありますが、知識と技術をしっかり身につけることで子どもたちでも十分に楽しめる「遊び」ではないかと思います。
その遊びが、キャンプの幅を広げてより楽しいものにしたり、万が一の事態に遭遇した時のサバイバル術になったりしてくれるなら一石二鳥、三鳥ですよね。
別の書籍になりますが、「Bushcraft The More You Know The Less You Carry Notebook」というブッシュクラフトの本の名前にある”The More You Know The Less You Carry“という言葉。「知れば、荷物が減る」というような意味ですが、Patagoniaの製品タグに付いているコピー、The more you know the less you need.(知れば、必要なものは減る)(*1)に似ています。
以前書いたこちらの記事で紹介した、石川直樹さんの書籍「全ての装備を知恵に置き換えること」もそうですが、やはり僕はこの考え方に惹かれるようです。
でも、どこでやるの?
ブッシュクラフトの技術や活動には木を切ったり、地面を掘って焚き火をしたりと、一般的なキャンプ場では禁止されていることも多分に含まれているし、気軽に歩き回って遊べる山林も簡単には見つかりませんよね(*2)。
じゃあ、どこでやるの? という疑問が沸いてくるわけです。
そこで、ふと思い出しました。そうだ、友だちに借りた山を活用すれば問題なくできるじゃないかと。
これまで、子どもが小さいこともあってなかなか足を運べていなかった友だち所有の山。今年はここに小さな基地をつくって、キャンプ仲間とブッシュクラフトが楽しめたらな〜と思っています。
しかし、僕のようにたまたま山を借りることができるなんてことは稀で、実際にこうした場所を得ることは難しいでしょうから、ブッシュクラフトが日本で気軽に楽しめるアクティビティとして広まるのは難しい気もしますね。
とはいえ、ブッシュクラフトの一つひとつの知識や技術は、一般的なキャンプに取り入れることができるものが多いので、知っておく身につけてことは損にはならないはずです。
というわけで、簡単に本書の中身を見ていきましょう。
ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル
この本の筆者は、一般社団法人 危機管理リーダー教育協会の代表理事で、自然学校「WILD AND NATIVE」主宰の川口拓さん。アウトドアとサバイバルに人生を捧げておられる方です。詳しい経歴は文末にWikipediaのリンクを掲載していますのでご確認ください。
以下、主なコンテンツを駆け足で見ていきます。
ブッシュクラフトにおける優先順位
ブッシュクラフトの知識や技術は、自然のなかで命を守る=サバイバルのそれをベースにしたもの。大きく4つに分類され、優先順位が設定されています。
本書によると優先順位は以下のとおりです。
- シェルター → 雨や風から体を守り、体温の低下を防ぐ。低体温の状態になれば数時間で命を落とす場合があるため、優先度は最も高い
- 水 → 人は水を飲まなければ72時間で命が危険な状態になる
- 火 → 灯り、調理、殺菌、心のよりどころ
- 食 → 人が生きていくのに食料は必要なものだが、口にしなくても相当長い時間生きることができるため、優先順位は最下位に設定されている
以前、参加したイベントでのワークショップでは、1)シェルター、2)火、3)水、4)食の順に説明を受けましたが、2)の火については体温保持の目的もあるので、決して違ったことを言っているわけではないようです。
道具を選ぶ
先述の4つ、シェルターをつくる、水を確保する、火を起こす、食を楽しむといった活動や技術の解説に先立ち、それらのための道具の選び方が紹介されています。
ブッシュクラフトの活動はできるだけ少ない道具で行われますが、だからこそ使う道具は十分に検討、吟味して選ぶ必要があるわけですね。
本書では、ナイフ、アックスやナタ(鉈)、タープ、ロープ、火や食の道具、寝具などの選び方、扱い方、考え方などが紹介されています。
シェルターを作る
雨や風から体を守って体温の低下を防ぎ、体を休めるための寝床にもなるシェルター。
場所を決めるために重要な3つの要素やレイアウト、シェルターの種類やつくり方が紹介されています。
特に面白いなと思ったのは「デブリハット」。
これに寝泊りするのは少し勇気が必要ですが、子どもたちと一緒につくったら、それだけですごく楽しそうです。
水を得る
飲料水、料理のための水はボトルなどに入れて持参するのも当然アリなのですが、自然のなかでの水の確保・入手、殺菌、濾過などの方法は、知っていても損にはならないはず。
小心者の僕としては、まずは水持参からブッシュクラフトをはじめるつもりですが、こんな小型の携帯浄水器くらいは持っていてもいいかも知れません。
火を起こす
メタルマッチやマッチを使った着火方法、ピッチスティックやチャークロスなどティンダー(火口)の種類やつくり方、薪の組み方、ファイヤーリフレクターのつくり方のほか、焚き火の後片付けも紹介されています。
この後片付けが徹底的で、痕跡がほとんど残りません。確かに自然のなかで焚き火のあとを見かけると不自然な印象を受けますし、なにより、中途半端な後片付けでは山火事になる可能性もあるわけですから、非常に重要な知識・技術であることに気づかされました。
食を楽しむ
焚き火にクッカーやケトルを吊るすためのポットクレーンやポットハンガー、トライポッド、食器のつくり方にくわえ、竹で米を炊いたり肉を炭火の上に直置きで焼くという超ワイルドな調理方法、野草の見分け方や食し方が紹介されています。
クレーンやハンガー、トライポッドはぜひ身につけたい技術ですね。
大切なこと(身を守る、ルールやマナー)
森の中での過ごし方、身の守り方、自然を活用したナビゲーション、携行するべきファーストエイドキット、そして自然のなかでブッシュクラフトを楽しむためのルールとマナーについて解説しています。
僕の場合、ある局面において自分の知識や技術が不足していると余裕がなくなり、ルールやマナーにまで配慮が至らないことが(多々)あります。まずは小さく、簡単なことからはじめて、少しずつ自分のものにしながら幅を広げつつ楽しんでいきたいなと、最後の章であらためて思いましたね。
– – –
見開きの一方に必ず写真が使われているなどビジュアルも豊富で理解しやすく、眺めているだけでも楽しいので、繰り返し何度も手にとってしまいますね。
Amazonのレビューにもありますが、著者の川口さんの技術と知識もさることながら、自然に対する深い愛情と敬意がじんじんと感じられる内容で、読み物としても非常に興味深い一冊だと思います。
いつか川口さんを鳥取に招いてブッシュクラフト講座を開催したいと妄想してしまいました。
*1 もとはアボリジニ(オーストラリア大陸と周辺島嶼(タスマニア島等の先住民)の言葉のようです。
*2 だから日本におけるキャンプは、ロケーションやアクティビティではなく、アイテム偏重の文化になっているような気がします。
*3 川口拓(引用:Wikipedia)
関連サイト
・JAPAN BUSHCRAFT SCHOOL
・WILD AND NATIVE