「TOKYO 0円ハウス 0円生活」を読んでみた
久しぶりに面白い本を読みました。
TOKYO 0円ハウス 0円生活
知人が「これぞ現代のキャンプだ!」とSNSで紹介していたので、購入してみたんです。
筆者の坂口恭平さんは、大学の卒業論文制作のために、東京を流れる多摩川河岸に建つ住宅と、そこに暮らす路上生活者を調べ始めました。
路上生活者、つまりホームレスに対して一般社会に暮らす僕たちがイメージするものとは全く異なるものをそこに見た坂口さんは、引き込まれ、東京だけでなく大阪、名古屋範囲を拡大して、路上生活について調査するようになります。
その調査結果を一冊にまとめたものが、「0円ハウス」という本でした(この記事で紹介している本とは違います)。
「0円ハウス」は海外を中心に、書籍の販売はもちろん、美術館での展覧会が開催されるなど大きな反響を呼びます。
世界の主要都市での展覧会やイベント、現地の人たちとのコミュニケーションを通じて、自分自身が提起した「路上生活」というテーマにさらに関心を持った坂口さんは、東京隅田川を訪れ、「0円ハウス 0円生活」を実践している「鈴木さん」と出会うことに。
鈴木さんの豊かな食生活、ハイブリッドな空間の使い方、テレビやラジオ、照明など電気を使う、想像以上に現代社会的な生活、その根底にある考え方に、著者の坂口さんは強い衝撃を受けて取材を開始するわけです。
それをまとめたのが、本書です。
建築家が考える理想を具現化?
たくさんの驚きを与えてくれる本書ですが、まるでテントのように、家の設営(再建)と撤去が紹介されている章は、特に興味深いものでした。
隅田川河岸に建てた家は、国土交通省の月極の調査(?)のため、月に一度、完全に撤去して、まだ再建しなくてはいけないそう。
本書に登場する鈴木さんは、なんと、撤去に3時間、再建は1時間で実施しているとのこと(僕のキャンプの設営/撤収より早いかも 笑)。
この撤去と再建を効率的にするため、彼らの家は無駄なものは削ぎ落とされて常に進化し、また日常生活での利便性を高めるために日々、改良が加えられています。
しかも、コスト0円で。
彼らの家や生活は以前、記事に書いた建築家「隈研吾氏のテント論」に出てくる、「取り返しのつく建築」「テント的な住宅」に通じます。通じるというか、彼らのことを書いたのでは、と思えるほどです。
もし、世の中の人たちすべてが路上生活者になったら、国はある意味、崩壊してしまうわけですが、彼らの生活は現代に生きる僕たち多くの示唆を与えてくれます。
例えば彼らは、社会から溢れてしまったもの(これを僕たちはゴミとして自分たちの生活圏から放出する)、自然界に存在するものを工夫して生活の中に取り込み、暮らしを豊かにしています。いわば究極のMYOGライフですね。でも本来、人は長い間、そのようにして暮らしてきたんじゃないでしょうか。
自分にはこんな暮らしはできないと思いながらも、いやいや、それも何かの思い込み、固定観念があるからなんじゃないの? と自分に言い聞かせてしまうほど、本書に登場するホームレスたちは、自由に、豊かに、そしてクレバーに暮らしていました。
内容には関係ないですが、本書に登場する幾つかのキーワードのうち、シュバルの理想郷は、初めて知りましたが、外観を見て声が出そうになるくらい驚きました。