御殿場口から富士山に登ってみた

ちょうど2年前の今日、2014年の7月31日に、結婚式ならぬ結婚登山で、トム(妻)と富士山に登ってきました。

富士登山のアイディアを思いついたのはトムでした。結婚に際して、「二人で困難を乗り越えて、大きな目標を達成したい。だから富士山に登ろう!」と。

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僕は「いいね!」と二つ返事で賛同しました。

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御殿場口からの富士登山

それまでに二度、富士山に登っていた僕ですが、いずれも山梨県側の河口湖口からのアプローチ(吉田ルート)。

この登山道は東京からアクセスしやすいため人気があります。吉田ルート含め富士山の主な登山道は4つありますが、残り3つのルートの登山者数の合計よりも、吉田ルートのそれの方が多いほどです。人気ゆえ、登山道の整備に加え、トイレや山小屋、救護所などの設備も整っています。

最初は、この吉田ルートを選ぶつもりでしたが、以下のような理由で最終的に御殿場ルートを選びました。

  • 困難さ Laboriousness
    吉田ルート:標高2300メートルからスタートするため、登頂までにおよそ6時間と比較的容易。トムが希望する「困難を乗り越えて」の要件を満たさない
    御殿場ルート:登山口の標高が1440メートルと低く、登頂までの所要時間が非常に長い。山小屋やトイレなどの設備もなく、八合目までの到達率は25%ほどと低い。まさに「困難」である
  • 混み具合 Crowd
    吉田ルート:非常に混む。国会の牛歩戦術も真っ青なほどに遅々として進まない
    御殿場ルート:登山者数が非常に少なく、自分たちのペースで登ることができる
  • ご来光の視認度 Visibility of Rising Sun
    吉田ルート:八合目より上でないと、ご来光が見えない(それゆえ、日の出の時間になると八合目以上が非常に混む)
    御殿場ルート:どこからでも見ることができる
  • アクセス Accessibility
    吉田ルート:夏場はマイカー規制があり、公共交通機関等の使用が必須
    御殿場ルート:マイカー規制がなく、登山口の直近までマイカーで行ける

ルートや日程が決まると、道具を買い揃え、週末は鳥取県最高峰の大山や近所の山々を登ってトレーニング。

持ち物リストをつくって荷造りをし、登山前後に泊まるホテルや、山中で泊まる山小屋の手配などを完了し、いよいよ富士登山当日を迎えました。

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ちなみに、登山当日のザックの中身ですが、行動食(昼食含む)、飲料(7リットル=2人分)、防寒着(フリース)、雨具(上下)、着替え、タオル、ヘッドライト、ストーブ、山頂での軽食といった感じです。やはり飲料がかなりの重量となりますが、7合目の山小屋まで一切水分補給できないことを考えると、十分な量を携行する必要があります。

いざ、富士登山

当日の天候は、超快晴! 

登山口に着くと、駐車場はクルマがぱらぱらと停まっている程度。観光地かと見紛う吉田ルートとは雰囲気が全然違います(まあ実際、吉田ルートの登山口5合目は観光地ですが)。やはり御殿場口から登る登山者は少ない模様。

届けを出して、午前9時前、いざ! 登山開始です。

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山頂が遠く、遠くに感じられますね。

御殿場ルートは、登山口付近は踏み固められているものの、しばらくすると下の写真のような荒い砂利(溶岩)が敷き詰められた状態になります。

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深いところだと、3〜4センチは足が沈みこむので歩きにくく、体力も消耗します。木も草もない、先述のとおり山小屋もトイレもない、何もない景色の中を、ジャリ、ジャリという自分の足音を聞きながら、ただただ登っていきます。

時々、雲に覆われ、瞬間的に数メートル程度に視界が悪くなるので、それがトイレタイム。

トイレで立ち止まったり、時々座って水分補給したり、チョコレートをかじって、また歩き出す……。

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午後3時、登り始めてから6時間後に、ようやく六合目(2,830メートル)に到着しました。

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登山口(五合目)の標高は1400メートルほどなので、同じ高さ、1400メートル登ってきたことになります。

眼下には雲海が広がり、「気持ちいいなあ」と小さな達成感に浸っていました。しかしこの時、トムの中に、僕とは別の感情が大きなものとなって溜まっていたのです。

予定どおり(希望どおり)、困難に直面

登山初日、僕たちが宿泊を予定していた「わらじ館」があるのは七合目。「よし! あと一合、頑張ろう!」と声をかけて、六合目を出発しました。

しかし、30分もしないうちに、トムの動きが見るみると悪くなりました。トムのザックを僕が背負い(と言っても、中は衣類くらいで軽いのですが)、歩くペースをかなり落としても、それでもどんどん遅れてしまいます。

そしてとうとう、トムは座り込んでしまいました。

日陰のない炎天下、足元の悪い砂れきを6時間以上も登り続けてきた疲労。五合目から六合目まで6時間もかかり、宿のある七合目まであとどれだけかかるのか分からない不安(上を見上げても山小屋らしきものは何も見えない)。標高が3000メートルに近くなり、疲労なのか高山病の症状なのか分からない、体のちょっとした違和感に対する恐怖。

様々な不安要素がトムを追い詰めていたのでした。

時間は午後4時前。七合目までそれほど距離があるわけではないと分かっていても、御殿場ルートは僕も初めてなので、確かなことが分からない。日没までの時間を考えると、登り続けるか、下山するかを決めるまでに、あまり時間は残されていませんでした。

トムにどうしたいか尋ねても、明確な答えを彼女自身も持てていません。

標高から考えると、七合目まではふつうに歩けば1時間もかからない距離であるはず。高山病でないなら、ゆっくりでも歩くことができれば、下山するよりも山小屋に早く到着できるだろう。

あれこれ前進する理由を考えましたが、トムを勇気づける説明や言葉は出てきませんでした。

しかし、僕は登山継続を決断しました。僕もトムを山頂に連れていってやりたいし、トムもまだ完全には諦めていない。この状況が、二人が経験すべき、克服すべき困難だと思ったからです。

僕はその考えをトムに告げて、ただし、下山したいなど、思ったことや気持ちは正直に交換し、ちょっとした体調の変化もきちんと伝えあおうと決め、七合目を目指すことにしました。

「(登山道の数十メートル先の)次の曲がり角まで頑張ろう」という、「それならできるかも」と思える小さな目標を設定して、少しずつクリアしていきました。

長めの休憩をたびたび取りながら、歩くこと1時間。

ついに七合目に到着。

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そして上を見上げると、僕たちの目指すべき「わらじ館」がかすかに見える!

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そこから30分、ついに、その日の宿である「わらじ館」へと到着しました。

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登山靴を脱いで足を伸ばして休憩し、カレーをたっぷりいただいて(めっちゃ美味しかった!)、午後7時前には寝床であるシュラフへと潜り込みました。

二人とも即、眠りに落ちたことは言うまでもありません。

ご来光を拝みながら指輪交換

7月末の富士山の日の出時間は、午前4時半頃。

前の晩、早くから寝ていた僕たちは、4時には起床。冷え込んで氷点下に近い気温でしたが、山小屋の外でご来光を待ちます。

すでに東の空は明るくなっています。

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地表を覆う雲の端よりも少し内側から、太陽が顔を出し始めました。

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初めて富士山の山頂からご来光を望んだ時、「えー! なんで雲の中から太陽が出てくるんだ!?」と驚愕した記憶があります。

が、この時は3回目なので、いたって冷静(僕は)。

他の登山者たちがご来光に沸くなか、僕たちはひっそりと指輪の交換を終えました。

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実は、交換した指輪の内側に、結婚した日付と富士山のシルエットを刻印していました。山頂ではなかったものの、富士山で指輪の交換を実現し、刻印に込めた意味を現実のものにすることができました。

山頂を目指す

朝食をとったあと、すっかり元気になったトムは「山頂を目指そう!」。

身支度し、午前9時、山頂を目指して山小屋を出発しました。

登山2日目も天気は良好! 標高3000メートル以上からの眺めは、気持ちイイの一言。

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山小屋が点在する七合目を過ぎ、八合目に入ると景色が一変。大きなものだと10トントラック以上はあろうかという大きな岩石がゴロゴロしているガレ場になり、傾斜も急になります。

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天気が良く、気温も少し高くなっていたので、汗をかかないようにゆっくり、ペースを乱さないよう登り続け、3時間後、ようやく山頂の鳥居が見えてきました!

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二人で鳥居をくぐって山頂にたどり着いた時の達成感はスゴかった! 

途中くじけそうになりながらも、過酷な御殿場ルートで見事に登頂を果たしたトム。エライ! よくやった! と僕のほうが涙ぐんでしまいました(笑)。

登頂はちょうど12時。お昼ごはんはカップラーメンです。

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山頂で食うカップラーメンほど、美味いものはないですね(笑)。

御殿場ルートを下山

食後にコーヒーを淹れたり、他の登山者たちに写真撮ってもらったり撮ってあげたりと、1時間ほど山頂でゆっくりしたあと(お鉢巡り、剣ヶ峰登山は見送り)、下山を開始。

下山は大砂走りを一気に駆け下りる!

大砂走りは砂利で埋まった柔らかな下山道。くるぶしまでズブリと埋まるほど深いので、膝などに負担がかかりにくく、走って駆け下りることができるのです。

結果、下山に要した時間、なんと3時間強。累計11時間かかった、あの大変な登りはなんだったのか? と思ってしまうくらいあっと言う間で、でも気持ちのよい下山でした。

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富士山から下山して思ったこと

登頂開始から下山完了まで、およそ30時間。この短かくも長い時間に、僕たち二人は大切なことを学びました。

  • 辛い時は、支え合うこと
  • 正直に、素直になること
  • 目標を共有すること

なんだ、当たり前のことじゃないか。と、僕もそう思います。

ですが、ふだん、忙しい毎日の中ではついつい忘れてしまい、辛い時に相手に当たってしまったり、正直になれなかったり、何のために毎日頑張っているかを見失ってしまったりします。

僕たちもそうで、子どもが生まれて二人だけの生活ではなくなってからは特に忙しく、こうしたごくごくシンプルで基本的なことも忘れてしまいがちです。

そんな時、僕はいつもこの富士登山を思い出すようにしています。

あれだけ大変だった富士登山を乗り越えることができたのだから、あそこで学んだことを忘れさえしなければ、これからも大丈夫! と。

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aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

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2件のフィードバック

  1. 関根 より:

    感動しました。

    お子様の出産の時のブログも涙がでました。

    心をピュアにしたいときにAWさんのブログを見て元気をもらっています。

    ほんとうは「コット」の検索からみつけたAWさん「キャンプハウス」。
    コットを頭にのせた写真があまりに友人にそっくりでびっくりしたところからスタートしましたが、空き家問題、テントの防犯 と私も気になりつつ、具体的に現実的に分析された内容にすごいな・・・と、よいブログを発見したことにうれしく思っています。
    これからもお子様の昼寝のタイミングをみはからって更新よろしくお願いいたします!楽しみにしています!

    • aw より:

      関根さん、コメントありがとうございます!

      僕の経験を、このブログを通して共有できていることを嬉しく思います。他の記事もたくさん読んでくださって、ありがとうございます!

      僕のような(ちょっと?)強面なお友だちがいらっしゃるんですね〜。ヒゲ+サングラスのいでたちのまま、保育園の送り迎えはしているんですが、やはり最初はギョッとされる方が多かったですね(笑)。もう最近は慣れてくださいましたが。

      昨日は子どもが僕に抱きついたまま寝てしまい、下ろすと泣くのでそのまま2時間……ブログの更新はできませんでした(笑)。日々、仕事と家事と子育てに追われて、なかなかブログを更新できないでおりますが、ぼちぼちと更新していきますので、またご覧になってください。

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