海外出張の準備は奏功したか
先日、仕事で1週間ほどフィリピンに行っていました。準備の記事をいくつか書いたので、このブログを読んでくださっている方はご存知だったかも知れません。
仕事で行ったのは25年以上ぶり、私的な旅行としても8年ぶりとかなり久しぶりの海外で、しかもいわゆる観光地ではなく、農村地帯が行き先の中心だったため、準備には気を使いました。
加えて今度の旅は移動が多いのが特徴で、
関西国際空港(KIX) → → マニラ・ニノイ空港(MNL) → → マクタン・セブ空港(CEB) → → ヒルトン港 → → カモテス諸島 サンフランシスコ・バランガイ※1(San Francisco Barangay) → → ヒルトン港 → → セブ市 → → セブ島の北部 マデリン・ムニシパリティ※2(Municipality of Medelin) → → CEB → → MNL → → ロスバニョス市(Los Baños) → → サンジャシント・ムニシパリティ(Municipality of San Jacinto) → → MNL → → KIX
といった感じの旅でございました。
フィリピンの都市部はの渋滞は凄まじく、ほんの数km進むだけでも1時間近くかかったりするのはザラです。僕たちはそこまで酷い渋滞に巻き込まれることはなかったですが、それでも今回の旅はずっと車に乗っていたという印象がありますね。
というわけで今日は、海外の農村地帯への訪問と滞在、そして移動が多いといった点を考慮して準備した内容と、それが有効だったか否かについて書いてみたいと思います。
準備したものたち
繰り返しになりますが、今回フィリピンには仕事で行っていました。スケジュールもぎっちり組まれており、「ちょっと体調悪いからホテルで休むわ」みたいなことが気軽にできるツアーではありませんでした。
そのため旅行先でさまざまな体験や食事を楽しむよりも、体調を崩さないことを重視して行動しました。例えば、どんな店であっても水や氷は飲まない、生野菜や火の通りの弱いものは食べない、早寝早起き、朝は早めに食事を済ませて出発までに体調を整えておく、といった感じです。
以上のような現地でできることとは別に、荷物として事前に用意できることは少しやり過ぎな感じで準備していきました(小心者ゆえ)。
医薬品など
今回の旅では毎日1日4時間以上、長い時だと8時間近く自動車で移動することになっていました。
在京時、通勤中の電車内で腹痛に襲われ、25年以上経った今でも忘れられないほど恐ろしい思いをした僕にとって、見知らぬ土地、しかも外国で、しかも親しくない人たちと長時間ドライブするなんてことはリスクの塊でしかなく、万が一が生じた場合の対策を講じて臨みました。
加えて、デングやジカなどの伝染病に代表される蚊害も懸念されたため、この点についても準備しました。
下痢止め | 携帯トイレ |
虫除け | ポイズンリムーバー |
虫さされ | 軟膏 |
絆創膏 | 日焼け止め |
除菌シート | 風邪薬(解熱剤) |
マスク | 目薬 |
この医薬品一式に加え、写真にはありませんが後述する携帯ウォシュレットとトイレットペーパーは常に僕のバックパックに入っていました。
マスクについては念のため、という軽い気持ちで持参しましたが、今回利用したフィリピン航空は機内でのマスク着用を強制していたので、持っていて正解でした。フィリピン国内でもマスクを着用している方は非常に多かったです。
食料品
繰り返しになりますが、計画に自動車での移動が非常に多く含まれていたので、朝の出発時には確実にトイレを済ませ、体調を整えておく必要がありました。そこで出発時間の3時間前に起床し、朝食は全て、すでに食べた経験と問題が起きなかったことを確認している食料品を日本から持ち込んだものに限定して部屋で食べていました。
例えば、レトルトのおかゆとか、フリーズドライの味噌汁、カップ麺(小袋入り)などです。移動中のカロリー補給などには、カロリーメイトを食べていました。
レトルトのおかゆは荷物としては重いし若干かさ張りますが、温めなくても美味しく食べられるし、特に梅干し入りなどは食欲がない時でも食べやすいので、持っていって正解でした。毎朝これだけでも良かったかも知れません。
では現地の料理は何も食べなかったのかと言われればそんなことはなく、後述しますが、昼食や夕食は現地のお店でフィリピン料理を楽しみました。
役に立ったもの、そうでないもの
その他、持っていったアイテムの中から、役立ったもの、意外とそうでなかったものを紹介していきます。
電気ケトル
先ほど紹介した食料品を食すために必要となるのが、お湯です。
しかしホテルによっては電気ケトルなどお湯を沸かせるものがない可能性が高いと考え、折りたたんでコンパクトに収納できる電気ケトルを購入し、持参しました。
案の定、セブ市とセブ北部で利用したホテルには電気ケトルがありませんでした(ついでに初日の部屋には窓がなく、シャワーはほぼ水でした笑)。
朝3時前に起床して鳥取からKIXまで運転し、2本の飛行機を乗り継いで到着したホテルで飲んだ温かいカフェオレ、実に美味かったですねぇ……。
が!
翌朝、日本から持参したレトルトのおかゆやフリーズドライ系の味噌汁で朝食をとろうとしたところ、ケトルの電源が入らない。しばらく格闘して使用を諦め、調べたところ、240Vの環境で使用する場合は、製品の底部にある小さなツマミをひねって電圧を切り替える必要があったようで……初夜のカフェオレを最後に故障してしまいました(涙)。
黒いネジのようなものが電圧切り替えスイッチですね
しかし、食事はとらなければいけないということで、インスタントラーメンやフリーズドライの味噌汁に水を注いでみたところ、お湯よりも時間はかかりますが十分に食せる状態になるし、温かいそれよりは劣るでしょうが十分に美味しい、という発見がありました。
でも、それにしても、勿体ないことをしたもんです……。
追記(2023/7/5)
こういうツイートを見かけました。意外と、旅の必需品かも知れませんね……電気ケトル。
ホテルに宿泊する際にまじで使っちゃダメな物が一つある。それは【部屋にあるケトル】あれに靴下を入れて熱湯消毒してる人がいるし、卵茹でる人もいるし、麺ぶちこんでラーメン作る人もいる。これはガチ。日本でも海外でも私は使わない。 pic.twitter.com/UWbVvyOaHp
— あおい🇹🇷世界○周中 (@aoi_travelgraph) July 4, 2023
wildo fold-a-cup
インスタントラーメン、フリーズドライの味噌汁やスープを飲むための器として、ウィルドゥのフォールダーカップを持って行ったのですが、これが正解でした。
カトラリーも持参しました
折りたためる+重ねられるのでコンパクトになるうえ、柔らかいので荷物の隙間に押し込んでも隣りあう荷物を傷める心配がないなど、旅先に持っていく器として非常に優秀でした。
ただし、プラスチックぽい素材でできていて油汚れは落としづらいので、毎朝、使用後の洗浄にやや時間を要しました。
携帯ウォシュレット
ウォシュレットのない暮らしは考えられない僕にとって、海外旅行での最大の懸念事項がトイレ。以前、キャンプ用に購入していた携帯ウォシュレットを持っていったのですが、想像どおり最高の仕事をしてくれました。詳細は割愛しますが。
今回の旅行では先述のとおり、地方の農村地帯にも足を運びました。トイレは行政施設などを利用することが多かったのですが、便座が無かったり、壊れていて水が流れなかったり、水を張った大きなバケツから水を汲んで流す必要があったりなど、日本の清潔なトイレに慣れ切っている僕には、彼の国のトイレ事情はかなり厳しいものがありました。
ランチ等で利用したいくつかのリゾートはさすがに綺麗でしたが、ファストフード店のトイレは壊れていました。いっぱんの住宅のトイレ事情、どんな感じなんでしょうね※3。
清潔さやウォシュレットなど、日本はトイレ文化についてもガラパゴス化していると言われていますが、ここばかりは世界標準になってほしいものです。
洗濯袋
旅の前半はホテルが日々変わったのですが、後半はマニラで同一のホテルに3連泊する予定だったので、前半使用した洋服をマニラに入った日に洗濯して再利用することで、持っていく衣類の量を減らす計画を立てました。
そのために用意したのが洗濯袋です。
これは思ったよりも使えませんでした。お湯を入れると重くなるし(当たり前)、それを振って洗濯するのも大変です(当たり前)。この袋の中で濯ぐのもまた大変なので、結局、洗面所の洗面ボウル(洗面器)を使って濯ぎました。
ならば洗うのもこれでイイではないか!
そしてこれまた当然の話なのですが、洗濯物は干してもすぐに乾くわけではありません。マニラ2日目の靴下が足りず、2日連続で同じものを着用することに。
こういう当たり前のことを事前に計画に織り込めず、体験しないと分からないってところに自分の能力の限界をひしひしと感じますねぇ……。
スーツケース(SOLGAARD)
以前に記事を書いた、スーツケース「SOLGAARD」は最高に使いやすかったです。
この製品の最高のウリである「立体シェルフ」は本当に使い勝手がよく、ホテルの部屋に入ったらこれを取り出してハンガーラックにかけるだけで全ての衣類にアクセスできるというのは本当に便利でしたね。
また、空港で荷物を預けるカウンターには行きも帰りも長蛇の列ができていましたが、SOLGAARDの高さ66cmは腰を掛けるのにちょうど良い高さで、疲れを軽減してくれましたし、シルエットが他のスーツケースと異なるので、手荷物受取所での視認性も高いと感じました。
このスーツケース、ファミキャンでも有用かも知れません。近くファミキャンやる予定なので試してみようと思います。
その他、旅の所感をつらつらと
Balutを食べてみた
滞在中は、現地コーディネーターたちにフィリピン料理を楽しめるお店に連れてってもらいました。
豚の丸焼き「レチョン(lechon)」、豚肉の炒め物「シシグ(Sisig)」、素揚げした豚肉にピーナッツソースをかけた「カレカレ(Kare-kare)」、酸味の効いた鶏や豚の入ったスープ「シニガン(Sinigang)」、豚の角煮に似ている「アドボ (Adobo)」、バナナを春巻き状に揚げたおやつ「トゥロン(Turon)」などなど、代表的なフィリピン料理はおおむね食べることができました。彼の地では世界を制覇したM社よりも人気のあるハンバーガーショップ、Jolibeeにも行きましたし。フィリピンの方は野菜をあまり食べないようで(さらに僕自身が生野菜を食すのを控えていたこともあり)、滞在中は野菜の摂取が極端に減り、違った料理を食べても「結局、また豚か」みたいな感じになってしまうところもありましたが。
で、フィリピンの珍味と言えば、「Balut(バルット)」。
とはいえ僕も今回の旅までその存在を知らず。夜、セブ市内を車で走っている時、道端の屋台が目に入ったので、同乗していたフィリピン人に「あれは何を売ってるのか」と聞いたところ、「きっとBalutだろう」と教えてくれたのです。
Balutはアヒルの有精卵を孵化直前にボイルした、いわば茹で卵です。
見た目は、我々がふだんよく目にする鶏の卵よりもきもち大きめで、じゃっかん青みがかかっています。
(以下、やや閲覧注意です)
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この卵の殻を割ると、スープが溢れ出てきますので吸い込むようにして啜ります。
さらに殻を割ると、そのままの姿をしたヒナが出てきます。白身や黄身のような部分もあります。
食した感想ですが、鶏肉の食感や味わいを持った茹で卵、という感じでしょうか。嘴や骨などが形成されているので軟骨のような口当たりもあります。買った時にもらうお酢や塩を振っていただくのが一般的なようですが、僕は何もつけずそのままをいただきました。
毎日でも食べたい! とは思いませんが、フィリピンでは広く食べられているだけに、美味しかったですね。
国によって風習や文化などさまざまな違いがあります。そんな中でも食べものは実際に口にして直接自分の体に取り込むという意味で自分も当事者になることを避けられないわけで(食べないという選択肢はありますが)、非常に興味深い体験でした。
大きな格差
農村部を訪問した今回の旅行では、経済的に厳しい環境で暮らしている人たちを目の当たりにすることになりました。
フィリピンは台風の進路に当たることも多い国です(年に20回以上、台風が来るそうです)。台風で強い風が吹けば簡単に吹き飛ばされそうな、トタンでできた家や海岸際に生えているマングローブの木に直接造られた家、そんな家をたくさん見かけました。
バラックのような住宅が軒を連ねる。セブ島北部にて撮影
一方でマニラ首都圏のマカティなどの高層ビル街に象徴されるような経済的に発展したエリアも多くあり、一つの国の中に非常に大きな経済格差が生じているのを実感しました。
人が多く、子どもたちが元気
フィリピンは人口が急激に増加している国の一つで、2000年は7600万人だった人口が四半世紀も経たない間に3000万人増え、1億1000万人に到達しようかという勢いです※4。
実際にフィリピン、特にセブではたくさんの子どもを見かけました。メデリンというそれほど大きくはない行政区内を車で走っている15分ほどの間に、3つの学校を見かけ、その校内は子どもたちで溢れかえっていました。小学校と思しき建物から弾かれるようにして出てくる子どもたちの笑顔は、見ているこちらまで幸せになるほど可愛らしく思えました。
社会も子どもに対して寛容で※5、例えば、フェリー内で子どもが大声で泣き叫んでいる時も誰も嫌な顔ひとつせず、親は他人の目を気にすることなく子に寄り添うように対応していたように思います。
ただ、先ほど書いたような経済的に貧しい地域での急激な人口増加は、十分な教育の提供を難しくさせ、貧困の連鎖を生み出します。
ベニグノ・アキノ3世大統領政権下のフィリピン政府は2012年、人口抑制法(RH法)を成立させました。これにより「望まない妊娠の予防のための避妊方法の選択肢の拡大、入手可能性の拡大、そして若者に対する性教育の推進、政府の保健担当者の実務研修」※6が実施されているとのこと。ただ、RH法の制定までに10年以上もかかった理由 — 避妊や中絶を良しとしないキリスト教カトリックの影響は当然個人レベルにまで浸透しているため、政府の取り組みがなかなか進まないのが現実のようです。
とはいえ、人が増えている国や地域というのはやはりそれだけの熱量があります。どこに行っても人、しかも若い人(フィリピンの平均年齢は24歳※4)と活気が満ち溢れているように感じましたね。
- バランガイ(英語:barangay, タガログ語:baranggay)は、フィリピンの都市(cities)と町(Municipalities)を構成する最小の地方自治単位であり、村、地区または区を表す独自のフィリピン語である。また、バリオ(barrio)という旧名でも知られる。バランガイは地名においてしばしば「Brgy」または「Bgy」と略される。2019年5月時点で、フィリピンには合計42,045のバランガイがある。出典:Wikipedia
- Municipality = 基礎自治体
- フィリピン起業日記2「フィリピンのトイレと紙の事情 ~知っとかないと悲惨な5つのコト~」、フィリピン留学.NET「【留学前に知りたい】日本と大違い!フィリピンのトイレ事情と注意点」
- Backwise「【人口爆発】フィリピンの人口増加と人口問題について」
- フィリピン人は他人にあまり関心がない、子どもに対してそれほど厳しくしつけることがない、とも言われています。
- JOICFP「フィリピンの女性の歴史的な勝利―リプロダクティブ・ヘルス法成立」
間違ってコメントが反映されてしまったけど。
なかなか面白い旅だったよだな。
俺も25年前にセブ島へ行ったことを冒頭の画像見て思い出したよ。
あぁ、今もこんな感じなんだナって。
まだ若かったし、貧困っていう言葉も外国で起きている他人事、今ほどリアルに感じたりする時代でもなかった。
思い出すのは、空港を降りて直ぐに何とも言えない臭いがした事、ホテルまでの道中で見たバラック小屋のような街並み、仕事も無く昼間っから退屈そうにしている現地の大人たち、観光客を見つけると駆け寄ってくる物売りの子供たち。
日本が普通だとどこかで思っていた俺にとってはかなり驚いたな。
観光じゃない分体調を崩せないプレッシャーはなかなか大変だったな。
デリケートな分余計に大変だったんだろうな。目に浮かぶわ。
常備薬とウォシュレット、携帯トイレ、まぁいつもキャンプで持ってきているしいつも通りといえばいつも通りだけどな。
しかし、子供が多いというのは日本や韓国からすると羨ましいというかなんというかだな。まぁまた詳しい話は次のキャンプの時にでも聞くことにするわ。
あのゆで卵はちょっと食えないな俺は。
農業がキーワードの旅だったけど、農村部以外にもフィリピン大学やIRRI(国際イネ研究所)、ISAAA、SEARCAといった国際機関にも行ったのよ。その天と地ほども差のある環境がね。親の経済状況や生まれた土地という子どもには選択できない条件がその子の教育環境をつくって、大人になっても結局のところ親に似た経済状態になってしまう、正と負の連鎖を目の当たりにして、最近流行った「親ガチャ」という言葉を思い出してたよ。フィリピンほど極端ではないにしろ、日本も似たようなところはあると思う。先日Twitterで呟いたのはこのことなんだけど。
いつものキャンプより100倍は注意して望んだけど、まあまあそれなりに楽しめたよ。そして戻ってきてからは、なんだかまた旅に出たい気分になってる。来月は北海道に行くことになってるけど、今年は家族と海外に行きたいなぁ。
茹で卵、美味かったよ。