テント”前室掘り”のススメ
先日の雪中キャンプで、以前からやってみたかったんだけどやる機会がなくて今回初めてやってみたらめちゃ良かったのが、”前室を掘る“です。
撮影: Mr.K
前室を掘るメリット
前室を掘るとどんなイイ事があるのか、まとめてみます。
- テント内で起立できる(上着の脱ぎ着や片付けが異様に楽ちん)
- 上がり框のように靴が脱ぎ履きできる
- 椅子を置いて、掘ってない部分をテーブルとして使える
- 物干しエリアとして使える
それぞれについて書いてみます。
1.テント内で起立できる
これは説明不要ではないでしょうかね。僕のように50歳近くなってくると腰をかがめた中腰の姿勢は何をするにしてもマジに厳しいものがありますので、背の低いテントの中にも関わらず立てるというのはパラダイムシフトと呼んでいいくらい劇的な変化を生じさせます。
今回の雪中キャンプのように雪が降っている場合、テント外の活動ではレインウェアの着用が必須です。テントに戻ればそれを脱ぐんですが、テントの前室で膝をついたり中腰の姿勢で、となるのがふつうです。しかしテントの中で起立できれば、立ったままで脱いだり着たりすることができるわけです。
テント室内を片付ける時も、前室に立ってインナーテント内の道具を、まるでテーブル上でそうそているかのように片すことができます。
僕の愛用するテント、HILLEBERG NAMMATJ 3GT(以下、ナマッジ)は最高のテントですが、高さが1メートルちょっとしかないため、当然前室内では立つことができず、それが背中痛、腰痛の原因になっていました。
ですが、(雪が潤沢な雪中キャンプにおいては)それともサヨナラです。
2.上がり框のように靴の脱ぎ履きができる
次に素晴らしいのが、靴を脱ぎ履きする時です。
前室を掘らずに靴を脱ぎ履きすると、どうしても雪がインナーテント内に入ってしまうことがあります。それ以外でも、前室内を移動している時に何かの拍子に雪を上げてしまうことは多々あります。インナーテントに入ってしまった雪は溶け、シュラフなどの水気厳禁アイテムを濡らしてしまう危険性があるので排出しなければいけません。
前室を掘れば、基本的にこれがほぼゼロになります。
雪中キャンプではブーツのように背丈のある靴を履くことが多いと思います。こうした形状の靴でも、深く掘った前室に置いておけば真上から足を挿し入れるようにして履けるので、実に楽ちんです。脱ぐ時もインナーテント入口に座って脱げるので、これまた楽ちん。
テントの出入りで靴を履いたり脱いだりするのはキャンプにおける苦行の一つですが、前室を掘ることでこの負荷はかなり軽減されます。
3.椅子を置いて、掘っていない部分をテーブルとして使える
ナマッジの前室はガイドテープによって二分割されていますので、今回の雪中キャンプでは、インナーテント寄りの部分の雪を掘り、残った部分は雪を残して物を置けるスペースとして使いました。
また、前室を掘り込んだ深さは60〜70センチほどだったので、雪を残した部分の高さ(差分)はちょうど家庭で使うテーブルと同じような高さになるんですね。僕が使っているキャンプ用の椅子の座面高は30センチ弱と家庭用のそれよりも低いのですが、僕のような小柄な体格でもテーブルとして問題なく使うことができました(座高が高いんですかね笑)。
4.物干しエリアとして使える
掘り込んだ深さは60〜70センチほどだったので、木の枝や登山用ストックなどを渡すことで簡易的に物を干すことができました。
濡れがひどいレインウェアやグローブなど、すぐにインナーテントには持ち込みたくない衣類や洗ってすぐの食器といったアイテムを干したい場合に有効でした。
バックパックを背負う時に楽
撤収時、穴の中に降りることでバックパックを容易に背負えたこともオマケとして書いておきます。
前室を掘るデメリット
以上、前室を掘るメリットを書き連ねましたが、デメリットも一つだけありました。
60〜70センチと深いので、テント内に入る時に誤って落ちてしまうと怪我をする可能性がある、ということです。
先日の雪中キャンプ、アルコールは摂取しなかったこともあって僕の意識は常に明瞭だったので、掘り込んだ前室のことを忘れて足を踏み外すといったことはありませんでした。が、お酒をしっかり楽しんでからテントに帰ってきた場合には、そのリスクがないわけではないなと。
そうでなくても70センチの段差を上がったり降りたりするのは少し大変だと感じる人もいるでしょう。
対策
そこで以下のような”一手間”を加えることで、より快適で安全な前室をつくることができそうです。
- 落下防止 → 掘る位置を少し奥にして、出入口から離す
- 上り下りの負担軽減 → テント及びインナーテント出入口を一段高くする
- 利便性向上 → 物置・テーブルスペースの下を少し掘り込む
買ったばかりのApple Pencilで描いてみました
前室掘りに必要なもの
テントの前室の雪を掘り込むには、コンパクトになるショベルが必須です。
僕の愛用するショベル「Black Diamond ebak7 BD43004」
僕が雪中キャンプで使用しているショベルは「Black Diamond ebak7 BD43004」。ハンドルを長くしてざっくり大きく掘る、短くして手狭な部分を掘る。ホウ(鍬)にして手向きの違う使い方で、特に壁面となる部分を成形する。などなど、使いやすいショベルだと思います。
もう一つは、掘りやすい前室を持っているテントです。
前室が狭かったり変わったカタチのテントの場合、前述したメリットの恩恵に与れない可能性が高いです。もちろん違うメリットが生じることもあるとは思いますが。
前室が掘りやすいという視点で雪中キャンプ用のテントを選んでもいいのではないか。個人的にはそれくらい重視してもいいと思えるほど、掘った前室は雪中キャンプにおいてテントでの時間の質を高めてくれると感じています。