耐震補強工事が完了した
所有者である僕の父は、この家(T町ハウス)に暮らすことを当初から反対していました。
理由は、地震に弱いから。
T町ハウスが建てられたのは昭和38年。増築部は昭和46年と非常に古く、耐震という考え方がなかった時代の建物です。間違いなく地震に弱い。
これにくわえて、T町ハウスの両隣に建っているビルもかなり古く、地震に強くないと疑われることが父の心配を強くしています。
しかし、両隣のビルについてはいかんともしがたく、山が近くにあるので土砂崩れするかも知れないとか、川が近いので大雨が降ったら氾濫するかも知れないといった類の問題に近いものがあります。祖先が選び住んできた土地ゆえ、タイムマシンがなければ変更できません(そもそも鳥取大火か鳥取地震の後の行政による区画整理で土地の大半を失い、残った部分に住んでいるという話ですが)。
もちろん、ここではない全く別の土地を購入して家を建てたり、賃貸住宅に暮らすという選択肢がないわけではありません。しかし現在の社会状況を踏まえて将来を見通した時、新たに不動産を手にいれることは僕たちにとってこれ以上ない悪手 に思えますし、T町ハウスに引っ越そうと考えた僕なりの理由もあって、とにかく、現にT町ハウスに住んでいる僕たちができることと言えばT町ハウス自体を地震に強くしておくこと。これだけなのです(そもそも隣のビルが倒れてくるような地震ならば、T町ハウスが先に倒壊しているでしょう。耐震補強もしていない築60年以上の古い木造家屋が倒れないのに、鉄骨のビルが崩れ落ちてくる可能性は、ゼロではないだろうけど高くもないだろうと)。
そしてこのたび、耐震改修工事が無事に完了し、以前よりは安心して暮らせる状態となりました。
縁側の奥の白い壁、右側は補強、左側は新設しました。去年つくったばかりの建具が2枚、ゴミ箱行きとなりました(涙)。
踏み抜いてしまいそうなほど傷んでいた縁側の床も綺麗にしてもらいました※1。
食堂の壁も筋交を入れ、耐震壁として生まれ変わりました。
我が家は食堂で過ごす時間が長いので、この壁が工事による変化を実感できる部分です
和室も、左側の壁を筋交や耐震材で補強されています(右側奥の壁は、先ほど紹介した新設した壁です)。
その他1階、2階の数か所にわたって補強してもらいました。基本的に見た目は変わってなく、しばらく我が家に来てない人ならおそらく気づかないであろうくらいの変化ですが、中身=安全性は段違いに高まっているはずです。
松島設計さん、田中工業さん、ありがとうございました!
耐震改修の補助金申請
さて、耐震改修を設計から工事まで、申請に絡めて振り返ってみたいと思います。
鳥取市が提供する無料の耐震診断を受け、惨憺たる結果を受けて耐震設計を依頼し、設計図が完成して補助金(12万円)を受ける……ここまでが昨年度。
今年度はいよいよ耐震改修工事。5月7日に補助金(120万円)を申請し、5月17日に補助金支払いが決定。決定次第すぐに工事にかかれるように田中工業と調整していたので、週末を挟んで5月20日に工事が開始。大工工事、内装や電気工事など全て完了したのが6月10日。トントン拍子に3週間、進んでホッとしております。
地震に強い家にする(正確には「最低レベルまで引き上げる」)という目的は達成され、先に書いたとおり、ようやく安心して暮らせる状態となりましたが、僕には改修工事の補助金を受けるという大きな仕事がもう一つ残っています。
というわけで、補助金申請の手続きを進めていきます。
前出の設計時の補助金もほぼ同じでしたが、補助金申請はだいたい以下のような流れです。
- 交付申請
- 交付決定(書面が郵送されてくる)
- 契約・着手
- 完了
- 代金支払
- 完了届・実績報告
- 補助額の確定
- 補助金請求
- 補助金の支払
5までは終わっているので、次は「完了届・実績報告」です。
補助事業等完了届、事業実績報告書、事業報告書などものものしい名前の書類を何枚か記入する必要がありますが、内容としてはいたって簡単。
ただし、「改修工事の様子がわかる写真と撮影方向位置図」は別で、すべての工事箇所の写真と説明、その写真がどの箇所のものなのかが分かるように図面で示したものを提出する必要があります。もちろんこれは工務店が作成してくれるのですが、A4用紙数十枚に及ぶかなりボリューム感のある資料を受け取った時は正直、驚きました。大工さん、こんなにたくさん写真撮りながら作業してくれてたんスね。あざます。
これら書類を持って市役所に出向き、担当課に提出して、僕の最後の任務も無事完了。市の担当の方はこれまでも窓口で何度か対応いただいていましたし、工事期間中は確認のため我が家に来てくれていたりなど何度も顔を合わせていて(勝手に)親近感を持っていたので、「よぉ」ぐらいの挨拶でいきたかったのですが止めておきました笑。
提出した書類や工事内容に不備がなければ、補助金等交付額決定通知書なる書類が郵送されてきます。それから1〜2週間ほどで入金されると思われるので、寂しくなった我が家の預金口座も少し元気を取り戻すはず。
古い家に引っ越したら最初に耐震診断しよう
さて、前回の記事の終わりに少し触れましたが、我々aw家は、僕の祖父が住んでいたT町ハウスに7年前に引っ越して以来、少しずつ手を加えてきました。
風呂(実施年2016年)、台所(同2019年)、トイレ(同2023年)といった水回りは業者の方にお願いし、その他についてはできるだけ自分たちで手を入れ、そして今回、耐震改修工事を実施したというわけです。
なぜ入居時に一度に修繕せず、部分的に直してきたのかと言えば、引越し当初は長く住むつもりがなかったから。冒頭に書いたように所有者である父が反対していたり、僕自身も耐震性の無さに不安を感じていたことがその大きな理由です。
ではなぜ住み続けたのかと問われれば、いろいろ小さな理由を挙げることはできますが、自分のルーツのある土地に住みたかったということ、子どもも気に入っているし犬もいること、そして慣れにより当初感じていた不安に麻痺してしまったこと、この3つが大きな理由だと思います。
入居する前にリフォームするか、住みながらリフォームするか。どちらが一般的かは置いておいて、前者の方が不便なく暮らせることは間違いなく、経験者として後者を語らせてもらうなら、不便を楽しむことができない人は前者一択だと言い切ることができます。ふだんの生活で水回りが使えないというのは非常に不便だからです。
しかし僕は、もし中古住宅、しかもT町ハウスのように築50年以上を経過しているような古い家を購入するなら、住みながらリフォームすることをオススメしたいと思います。暮らしの中で炙り出された改善すべきポイントを的確に直せるから。それに加えて、古い家というのは現代では考えられないぐらい不思議なつくりになっていることもあり(正に我が家)、実際に住む前に、そこでの暮らしで生じるであろう問題や解決策を想像するのは非常に困難だと思うからです。
しかしそれでも、住む前にやるべきことがあります。
耐震診断と耐震改修工事です。
僕たちがそうであったように、住む前に感じていた不安感は時間とともに薄まっていってしまいます。「今まで大丈夫だったのだから、これからも大丈夫だろう」という正常性バイアスが生じ、耐震改修工事の費用というハードルもあいまって、不安=動機づけがどんどん弱まっていくのです。
だから入居する前に耐震診断と耐震改修工事をするべきなのです。
住みはじめて7年以上経ってから重たい腰をあげた僕が言うのでは説得力がありませんが……。
- 補助金をつかっての耐震改修の場合、耐震改修以外の箇所は設計や見積りから除外して、別途作成してもらう必要があります。