ExCAMPなるサービスをチェックしてみた

今年(2018年)の6月、キャンプにフォーカスしたWEBサービス、「ExCAMP」がはじまりました。

今日はこのサービスについて考えたことを、つらつらと書いてみたいと思います。

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ExCAMPについて

ExCAMPは、ユーザーによるキャンプ写真の投稿やキャンプ場の登録、検索や予約が可能な、CGM(*)が軸となるキャンプ場の情報サイトです。


画面はExCAMPのWEBサイトのスクリーンショットです(僅かに加工)

PR動画を掲載しておきます。

一般的なキャンプ場情報サイトと異なるのは、ユーザーが登録したたくさんの魅力的な写真を中心にキャンプ場選びができる点。昨今は、テキスト情報よりも「SNS映え」する写真の方が人の関心を集めるのに有効とされていますし、写真はただ見ているだけでも楽しいコンテンツですので、いいですよね。

そして、上記のPR動画では紹介されていませんが、ExCAMPのユニーク且つ最大の特徴は、「キャンプ場版Airbnb」と形容されることからも分かるように、自分が所有している土地を登録することで、キャンプ場として貸し出すことができる、という点にあります。

ちなみに、アメリカにもHIPCAMPという類似サービスがあるようです。

ExCAMPのサービスは成長するか

ユーザーの立場から考えてみる

ExCAMPのユーザーは、大きく

  • キャンプ場を借りたいユーザー
  • キャンプ場として自分の土地を貸したいユーザー

の2タイプに分けることができます。

まず、前者について考えてみます。

キャンプ場を探しているユーザーにとって、ExCAMPを使うプロコン(*)とは何でしょうか?

ExCAMPがキャンパーの抱えている問題を解決してくれるとすれば、一つは、次のような点が考えられます。

ExCAMPには「プライベートサイト」、例えば1日1組といったかたちで宿泊者を限定しているサイト情報が掲載されています。

他の利用者が夜中まで騒いでいてうるさくて眠れなかった、子どもたちが騒いだり夜に泣いたりして周囲に迷惑をかけてしまわないかと心配、誰もいない静かな場所でのんびり過ごしたい……。そうした希望を持つキャンパーには、ExCAMPの「プライベートサイト」情報は有益です。

また、これまでキャンプ場として開放されていなかった土地、例えば北海道の広大な畑、大都会のビルの屋上、棚田の広がる美しい田園、原生林のような山林の中、珊瑚のかけらで覆われたビーチ……、そんな特別感のある場所でキャンプできるのは、とても楽しそうです。

一方、ExCAMPで提供される「私有地を活用したキャンプ場」には、一般のキャンプ場にある設備、流し場やトイレ、照明、サイトに横付けできる駐車場といったものがない可能性があります。

清潔なトイレ(最近では洗浄器付きのものも増えてますね)やシャワー、AC電源、キャンプ道具のレンタルや薪の販売など、充実した設備と体制を持つキャンプ場も多くなっています(普段そうしたキャンプ場を利用しないので、実情はよく知りませんが…)。

夜は真っ暗、水場もトイレもない。そんな状況でも楽しく過ごせる装備と技術を持つキャンパーであれば別ですが、そうでなければ少し不便に感じてしまうかも知れませんね。

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続いて後者、キャンプ場として自分の土地を貸したいユーザーがExCAMPを使うプロコンについて考えてみます。

私有地をキャンプ場として貸し出し、借りたい人と仲介してくれるサービスは現時点でExCAMP以外ありませんから、そうしたいと考える人にとってExCAMPはとても有効なツールになります。

しかも長期での貸し出しとは異なり、たいてい1〜2泊で終わるキャンプのために貸すということで、比較的気軽に貸すことができると思います。

しかし、気軽に貸せるとはいえ自分の土地に他人を招き入れるわけですから、当然、準備しておくべきこと、注意すべき点はあると思います。

東京でAirbnbでアパートを貸している友人がいるのですが、海外在住の外国人から宿泊のリクエストがあり、Facebookでその人のプロフィールをチェックしたところ、銃を持っている写真や、やや過激な内容の投稿があり、依頼を断ったという話を聞いたことがあります。

怖いですよね。

シェアリングエコノミーの特徴から考えてみる

ExCAMPは、AirbnbUberに代表される、いわゆるシェアリングエコノミーに属すサービスです。

Airbnbは家やアパート、Uberは車ですが、ExCAMPはふだん使用していない土地の利活用をサポートしてくれるわけです。

続いてはこのシェアリングエコノミーに関する一般的な2つのポイントから考えてみたいと思います。

一つめは、ネットワーク外部性(ネットワーク効果)です。

シェアリングエコノミーはネットワーク外部性の拡張性で、マーケットの規模を予想することができます。マーケットの規模は収益性、事業継続性などに直結する部分ですから重要な点です。

ExCAMPのサービスでいうネットワーク外部性の拡張性とは、

  • ふつうのキャンプ場じゃないキャンプ場でキャンプしたい
  • 自分の所有する土地をキャンプ場として貸し出したい

といった人たちが、ExCAMPを通じて相互に増えていく可能性です。前者が増えていけば後者は儲かりますし、後者が増えれば前者の利便性は増していきます。

サービスの利便性は、ユーザーの数の多さに依存しているわけです。

このネットワーク外部性の拡張性がどれほどあるのか、ここがExCAMPが成長する一つのポイントになると思います。

前者については、決して多くはないでしょうが一定数、存在すると思います。

魅力的なサイトがExCAMPに掲載されていて、それを利用し最高の体験ができれば、リピーターとなり、また口コミも発生して潜在ユーザーが掘り起こされる可能性はあります。

問題は、後者の人たちに対して「あなたの遊休不動産である土地をキャンプ場として貸せば、少なからぬ収入がありますよ」を、どのようにして伝えるか、です。

「キャンプに適したロケーションなのに生かされていない土地」は、首都圏よりも地方に多いことが予想されます。そうした地方の土地の所有者は高齢者が多いでしょうから、彼らに情報を伝え、重い腰を上げさせるのは、なかなか困難ではないかと想像します。

地道なドブ板営業が必要かも知れません。

もう一つの点は、ユーザーの2タイプ、前者・後者との互換性です。

例えば、僕がExCAMPを利用して「ああ、いいサービスだなぁ。自分もやってみたい!」と考えても、適した土地を所有していなければ、後者、つまり土地を貸し出す側に回ることができません。

AirbnbやUberについて言えば、サービスを利用した人が「ちょっと自分もやってみよう」と考えれば、比較的容易にサービス提供者に回ることができますし、この2サービスについて言えば、僕も提供者側に入ることができます。

また、後者、つまり土地の所有者の属性を想像するに、アクティブな現役キャンパーである可能性はそれほど高くなさそうなので、自分のキャンプ活動を通じて提供する土地の品質や設備を改善していったり、他のユーザーのサービス(提供された土地)をキャンパーとして使用し交流を持つ、といったことが難しそうです。

相互にユーザーが入れ替わることが自然に生じれば、それだけでマーケットは広がりますが、そうした点でも少し難しさを感じてしまいますね。

では、何か手はないか

土地の所有者=地方都市の高齢者に効率的にアプローチする手段として考えられるのは、行政や農協などを介することです。

都会の若者が突然やってきて集会を開いても、彼らが耳を貸してくれることは多くないかも知れませんが、いつも世話になっている行政や農協の人から聞く話には耳を傾けてくれるかも知れません。

これはExCAMPのスタッフも考えていて、行政に協力や協働を呼びかけています。

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ただ、こうした高齢の土地所有者たちが、こぞってExCAMPに土地を登録し、オンラインでの予約受付や、現地で利用者の対応ができるとは、何となく思えないんですよね。

一つ思い浮かんだのは、空き家になっていて誰も利用していない実家や祖父母の家、土地を今後どう扱えばいいのか悩んでいる比較的若い世代などがターゲットになるのでは? ということです。

家を取り壊して敷地に芝生(あるいはクラピア)を敷き、元あるインフラを活かして流し場や簡易トイレを設けたり、柵を立ててドッグランをつくったりし、ミニキャンプ場として再生。自分たちも利用しつつ、ExCAMPで集客し、費用回収と固定資産税の支払い原資を稼ぐ。

なかなか大変だと思いますが、何もしないで登録するだけで利用してもらえる土地は、よほどの絶景か、土地の中を清流が流れているとか、露天風呂があるとか、そんな恵まれた土地だけだと思うんですよね。

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僕の個人的な希望で言えば、林の中や海の近くなど、絶景でも何でもない単なる土地だけれども「ここでキャンプしたら、自然をがっつり感じられて面白そうだな」というロケーションに時々出会うのですが、やはり引っかかるのは「勝手にキャンプしていいのかな」という点。

ExCAMPでそうした土地が掲載されていたら、ぜひ利用してみたいと思いますね。

がんばってほしい

ExCAMPは、forent株式会社という、筑波大学発のベンチャー企業がはじめたサービス(Twitter / Facebook)。

若い人たちの挑戦です。

僕がいまできる応援は、彼らのサービスを土地の所有者に伝えたり、ExCAMPを通じてキャンプ場を予約する、写真を投稿してみる、といったことでしょうか。

僕も将来、キャンプに関連したビジネスを興してみたいという気持ちはありますが、具体的にはほとんど動きがとれていないのが実情。そんな立場、状況ですから、実際に動きはじめている彼らの少しでも力になれたらいいなと思いますね。

がんばってほしいです。

CGM=Consumer Generated Mediaの略。ユーザー(消費者)自らが生産者となってつくり出すコンテンツ、メディアのこと。
* 類似サービス:HIPCAMP
* プロコン=pros and cons(プロス&コンス)。メリット、デメリットのこと。
* カバー画像はExCAMPのサイトから引用しました。
参考記事
・PRTIMES「写真で探すキャンプ場検索サイト-ExCAMPをforent株式会社が提供開始
・THE BRIDGE「キャンプ場検索サイト「ExCAMP」が遊休地マッチングを開始、空いてる土地を「キャンプ場」として貸し出すオーナーを募集
・THE BRIDGE「キャンプの常識を変える!遊休地をキャンプ場として活用できるキャンプ版Airbnbの遊休地オーナーを募集開始
・Medium「アメリカで拡大中のキャンプ版 Airbnb は日本でも成功するか
・シェアエコ主義「2018年版シェアリングエコノミーサービス完全比較-専門家選ぶ160選

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Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

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