家の耐水性能について考えてみた
海の日の三連休は、高熱で倒れていたawです。
西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の発生から10日ほど経ちました。とてつもない雨が降り、山が崩れ川が氾濫して町を飲み込み、多くの人が亡くなりました。今も多数の行方不明の方がいて、捜索が続いています。
本当に悲しいできごとです。
鳥取県でも山間部に位置する智頭町で、桜並木の土手が流された(画像出典:智頭の山人塾)
鳥取県にも大雨特別警報が発令されていて、一級河川のすぐそばに暮らす僕の両親は、T町ハウスに一時避難しました(幸運にも、大きな被害は出ませんでした)。
雨が止んで梅雨があけ、僕たちにふだんどおりの生活が戻ってきた一方で、岡山や広島など被害の大きかった地域を中心に、スフィア基準(*1)を全く満たしていない劣悪な避難所での暮らしを強いられている方が数千人規模います(*2)。
この猛暑の中で、お年寄りや妊婦、幼い子ども、乳幼児を連れた家族が避難所で耐えている辛さ、苦しみを思うと胸が痛いです。
しかし、避難所のような公的な役割や機能について、僕のような一般人が主導的な立場で物事を改善し、進めていくことは難しく、今の僕にできることと言えばわずかな寄付くらいです。
いや、それから、この災害を自分ごととして受け止めて、暮らす家の機能や安全性について検討し、対策を進めることはできるかも知れない……。
そこで、今回の記事では、すでに暮らしているT町ハウスに対してではなく、将来暮らす予定のキャンプハウスについての耐水性能について考えてみたいと思います。なお、キャンプハウスの立地は、R町の土地を想定しています。
家の耐水化とは
家の機能ついて考える時、地震に対する性能=耐震性能は誰でもすぐにイメージするものです。
しかし、大雨が降って河川が氾濫した時に発揮される性能=耐水性能については、なかなか考えが及ばないかも知れません。もちろん僕も、今回の豪雨災害が起きるまでそうでした。
調べてみたところ、滋賀県が「耐水化建築ガイドライン」をなるものを作成していました(*3)。
内容は、建築家や構造計算適合性判定資格者の方が実務で参照するような、かなり専門的なものですが、第5章(P7)にこのような図が。
画像出典:滋賀県「耐水化建築ガイドライン」
災害における耐水性能とはすなわち、「押し寄せる水から命を守ることができる」ということですが、コレを単純に考えると、家の一部を「水よりも高い場所」にするか、高いところに家を建てるかということになり、ガイドラインにもある3つのシンプルなアイディアに集約されます。
このうち「敷地の嵩上げ」と「高床式」の2つに注目してみます。
いっけん良いように思えるのですが、このアイディアでは、家を出入りするために、高いところと低いところを行ったり来たりする必要があります。
高齢になってから暮らす予定のキャンプハウスでは、屋内だけでなく、外からのアプローチにおいてもバリアフリーにしておきたいので、日常的に垂直動線を要求されるこのアイディアをそのまま導入するのはあまりよろしくない。つまり、
- 玄関は外部とのレベルを同じにしたい(外部道路や車庫から玄関まで、大きな段差や傾斜がない)
- 屋内はフラットでバリアフリー
- 家屋自体は、外部路面よりも高い位置に
という矛盾、相反する要求になってしまうわけです。
堀を作って強制的に高床式に
これを強引にひとつのアイディアにまとめると、以下のようなものになります。
大きな堀のようなものをつくり、そこに高床式の家を建てるわけです。
玄関のある家の前面に数十センチの隙間を設け、ウッドデッキと同じように板を渡しておきます。
今回のように大雨が降って川が氾濫する危険が生じた場合、あらかじめその板を外しておけば、水は堀の中に流れ込むので、家を浸水から守ることができます。
キャンプハウスと土地の関係性を見ておきましょう。
R町の土地は、西に小さな川と農業用水路が流れています。
この案を実施する場合は、家の東側に堀を設け、西側から押し寄せてくる水に対処することになります。
これら2つの川は、いずれも大きくはないし、堤防のない、地面よりも低いところを流れている川です。氾濫してもそれほど大きな水害になるとは思えないんですが、そう考えて命や財産を失った人はたくさんいるはず。そこから学び、準備することが大切だと感じます。
お堀が担う、もう一つの役割
このお堀、実は大雨が降った時にもう一つ、不安を少し和らげてくれる役割があります。
R町、川は西側にあるんですが、東側に何があるかというと、低い山があります。
大雨が降って怖いのは、川の氾濫だけではないですよね。土砂崩れにも注意しなくてはいけない。
崩れてきた大量の土砂をすべて吸収してくれるほどの堀をつくるのは困難でしょうが、少しでもクッションになってくれればと。
家を支える柱は、相当頑丈に作らないとダメですね
小さな村計画と合わせて考える
ここまで考えたのは、災害が起きてもあくまでキャンプハウスにとどまり、そこでの被災を最小限に食い止めるためのアイディアです。
次回はこれをもう少し発展させて、仲間という単位で、自分たちの声明を守ることを考えてみたいと思います。
そう、R町につくりたいと妄想している「小さな村」での防災対策です。
参考記事
*1 スフィア基準:難民や被災者の生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準として定められたもので、詳しい内容はスフィア・ハンドブック(PDF)を読むことができます
*2 参考記事:現代ビジネス 「自然災害大国の避難が「体育館生活」であることへの大きな違和感」、災害対策基本法(内閣府HP)
*3 滋賀県では、「滋賀県流域治水の推進に関する条例(平成26年滋賀県条例第55号)に基づく浸水警戒区域における建築物の建築の許可について、条例第15条第1項第1号から第3号に定める基準と同等以上の安全を確保することができるものとして、条例第15条第1項第4項により、建築物の建築の許可を得ようとする場合は、本ガイドラインに基づき、同等の安全性を確保したかを判断できる図書を作成することが求められます。」とあるように、実際に家を建てる際の基準としても使用されているようです。
* その他、参考にした記事:おうちの長持ちレシピ「水害に強い家の特徴と自分でできる5つの対策」
西日本を襲った未曾有の豪雨。連日の報道で実態がわかり、胸が締め付けられる思いです。
何はともあれawさん家族が無事で何よりです。
堀を作って強制的に高床式にするアイディア面白いですね!
我が家の地域は土砂災害には無縁の地域ですが、一級河川に挟まれた地域になりますので今一度、ハザードマップの確認含め何か対策を考えねばと思ってます。
邪な気持ちが半分ありますが、とりあえずゴムボート等アウトドアでも利用できるアイテムを嫁に提案しようかと画策しておりますw
CISCOさん、コメントありがとうございます 🙂
家族みな無事です。一番ありがたいことで、本当になによりです。ご心配くださって、ありがとうございます。
ハザードマップの確認、とても重要ですよね。僕は、今回避難してきた両親が暮らしている家で育ったので、台風や大雨=河川の氾濫の危険=避難というのがすぐに頭に浮かんでくるんですが、一方で、災害や避難をそれだけでしか捉えない小さな考え方になっている危険性もあるので、やはり一度、行政や専門機関が出した資料は熟読、理解しておくべきだと感じました。
ゴムボート、いいですよね! 僕もパックラフトのボートを検討してみたいなー、防災にも使えるならなおよし、と思っていました。少し検討してみたいと思います 🙂
私が子供の頃ですが、今はなき父が土砂崩れのニュースを見ていたとき「新しく住宅にしたところはなぁ。。。まあ昔から人が住んでいるところが本当の良い場所だ」と呟いていたのが妙に印象に残っています。
私の実家も大きな川に近く、用水路もすぐ隣を流れており、海抜も低いのですが、災害をまともに受けたことはなく、少なくとも百数十年以上はそのままの形で住み続けています。
一番の防災対策は、歴史的に見ても安定してきた土地に済む、ということなのかもしれませんね。
イッシーさん、コメントありがとうございます 🙂
歴史的に見ても安定してきた土地に住む、おっしゃるとおりですね。
僕がよく聞いていたのは、大きな木があるところは災害が少なかった場所だ、というような話でした。木が大きく成長するには何百年もかかるので、歴史的・時間的な裏付けがあると。
一方で、僕が今暮らしているT町ハウスは、水害や土砂崩れなどの被害はないようですが、鳥取地震や鳥取大火で二度、家を失うという歴史があるようです。。
僕たちは、新しい土地を取得することは今後ないと思いますので(将来何があるかは分かりませんが)、今回の記事では親族が所有し、将来住むことを想定しているR町の土地の防災対策を考えてみました。ここは妻の祖父が住むまでは誰も住んだことのない土地だったようです。自分たちでできる対策だけでなく、ここで以前に土砂崩れや水害があったか、という話を調べたり、聞いてみることは重要ですね。
参考になる視点を与えてくださり、ありがとうございます!