娘の世界を広げる
鳥取、雪が降りました。
雪が降ると、50歳を超えた今でも少しワクワクするのですが、さすがに寒さは体に堪えるようになりました。住んでいる家が古いのもあって、この時期は本当に寒いです。元気なのは娘と犬だけ(笑)。
プールの見学室
毎週、スイミングスクールのために娘をプールに送っています。1時間ほど娘が泳いでいる間、新聞や本を読んだり、急ぎの仕事を片したりと自由な時間を過ごしていて、僕にとってリフレッシュとなる貴重な時間になっています。
ちなみに最近どっぷりハマっているのは、高田郁氏の時代小説。
「あきない世傳 金と銀」は昨年の渡米時に機内で読み、そのあまりの面白さに虜になってしまって年末に一気に全巻読破。今は「みをつくし料理帖」を読み進めているところです。いずれもストーリーの抜群の面白さは当然として、カタカナなどが一切使われていない純粋な日本語が心地よき。オススメです。
以前は本など読まず、2階に設られた見学室で娘の奮闘する様子をずっと眺めていました。その部屋にいる子供たちの保護者と思しき人々の大半が同じコミュニティ(地域、学校)に属しているようで、ローカルな話に花を咲かせています。プールに通いはじめた頃は、そんな話も僕にとっては新鮮で、こっそり聞き耳を立てていたのですが、何年も同じ話を聞き続けているとさすがに食傷気味になってきました。見学室から出て読書に勤しんでいるのは、娘の水泳が上達したという理由だけではない気も……(笑)。
世界が広がるとは
僕たちの娘は今年、10歳という節目を迎えます。かなり一端の口をきく(笑)ようになってきたりなど、順調に成長してくれていて嬉しい限りなのですが、それに伴って、今後、彼女が迎える岐路と決断についてもより考えるようになりました。
基本的には彼女が自分自身で考え、決められるようにサポートしたいと思っていますが、その一助になるのではないかと、多くの親がそう思うのと同じように、彼女の「世界」を広げてあげたいと考えてきました。
子供が幼い頃は、同じ家に暮らす家族、そこから離れて暮らす親族、保育園や幼稚園、習い事の場、小学校……と世界を広げていきます。彼らにとって全てとも言えるその世界は、しかし、大人から見れば相対的に狭く、かなり限定的に感じられます。時間軸でも同じことが言えると思います(幼い子供にとっては、今が全てです)。
自分が幼い頃、父親がなぜあんなにも新聞を読み、テレビをつければニュースばかり見ていたのか、当時は全く理解できませんでした。
僕の関心事は小学校でのできごと、友だちとの付き合い、上手く絵を描きたいといったもので、それがそのまま僕の世界でしたが、一方の父は、日本や地元鳥取の政治や経済、世界での主だったできごとが関心事だったのでしょう。
年齢や経験を重ねるごとに、自然と関心の対象や領域は広がり、視座が高くなっていく。僕の理解では、それが「世界が広がる」ということです。
つながりと責任
何に関心を持つかは、個人の性格や嗜好が大きく影響しますが、何かとつながったり、そこに生じる責任の有無も関係しているように思えます。
例えば、外国のある地域と仕事でつながっている人は、その地域に対して強い関心を抱いているはずです。僕自身、辞めて15年以上経つ会社の本社がある米国シアトルのニュースには、他の地域よりも敏感に反応してしまいますし、昨年行った諸外国についてもやはりそうです。
また責任という点においては、冒頭のプールの見学室の人たちが家庭や地域について熱心に話をしている理由が、そこでの自らの役割や責任を感じているからであろうことを考えると合点がいきます。
何とつながるか
この2つは別々に存在するものではなく、つながって→責任が生まれる、という連続したものです。まず、つながることが、新しい世界の扉になります。
何とつながるかで、世界がどう広がるかが変わる。
我が家に留学生を迎え入れた理由の一つが正にこれです。
2023年にスイスからエフちゃんが、2024年にはメキシコからアールちゃんが我が家に滞在してくれました。これによって僕たちが持つ世界地図に、スイスとメキシコという2つの点が打たれたわけです。
たった2つの点ですが、僕たちにとってはかけがえのないつながりです。このつながりがなければ、両国ともに女性が大統領※1であることを知ることはなかったかもしれませんし(いや、さすがに報道で知るかも)、スイスフラン(CHN)やメキシコペソ(MXN)の動向も気にすることはなかったでしょう※2。つまり、日々の関心事の網に、彼女たちの国の情報がかかるようになったわけです。
今の娘にとって、エフちゃんやアールちゃんという対象を超えて、スイスやメキシコという国が関心の対象になっていると断言はできませんが、僕が新聞を読みながら「あ、メキシコのニュースだ」なんて呟くと、「教えて、教えて」と言ってきたりするので、芽が出てきているのかも知れません。
期待するもの
僕は彼女に、グローバルな感性を持ってほしいとか、世界を股にかけて仕事してほしいとか、そういうことは考えていません。
今後、彼女が成長し、自我が強くなってきたら、自分で好きなものを好きなように楽しむでしょうし、学んでいくのだと思います。
ただ、僕たち親のふだんの振る舞いが、旧来の男女の役割という固定観念から娘を解放してくれるのではないかと信じるように、エフちゃんやアールちゃんとのつながりが、海の向こうにはスイスやメキシコといった国が現実に存在し、そこにはたくさんの生身の人々が暮らしていることを実感として知ることにつながるのではないか。そしてそれがいずれ、彼女の世界を広げ、欲を言えば、人間力を高めるために必要な俯瞰力やエンパシーを与えてくれたらなと、ほんの少し期待していはいますが。
・・・
冬、雪が降ると、家に引きこもって世界を閉じてしまう僕。対して娘は、「雪だー!」と外遊びを熱望します。すでに彼女のほうが世界を広げているのかも(笑)。
冗談抜きで、外気温と対して変わらない寒さの我が家。外へ出たほうが、日が当たるぶん暖かいなんてことはしょっちゅう(笑えない)。というわけで、これから娘と外で雪遊びしてきます。
- スイスの連邦大統領はカリン・ケラー=ズッターさん、メキシコはトランプ大統領との絡みで最近(2025年2月)その名をよく聞くクラウディア・シェインバウム・パルドさんですね。
- 旅行先として検討しているという理由が大きいのですが(笑)
参考記事
- 茂木健一郎 クオリア日記「親の子どもに与える影響が統計的にゼロになることが安全基地の証し。」
- Montessori Parents「モンテッソーリ子育て、家庭の「心理的安全性」がこどもの育ちに必要な理由」
- Benesse「自分で考え行動できる子が持つ俯瞰力とは?家庭でできるコーチングを用いた伸ばし方も紹介」