レイヤリング、ダウンと化学繊維など
鳥取の週間天気予報に雪マークが見られるようになり、いよいよ冬本番です。我が家も先週末、車のタイヤを冬用に履き替えました(いまだに筋肉痛がすごい)。
T町ハウスで迎える冬も今年で二度目。エアコンを設置したり断熱化を進めたり、ドアを付けたりと少しずつ快適になってきてはいますが、厳冬期になれば家の中は外とほぼ同じ気温に(笑)。
それゆえ、T町ハウスでの服装は「外と同じ」が基本です。
レイヤリング
登山などの一般的なアウトドアアクティビティでのレイヤリング(重ね着)、上半身は以下のような感じになると思います。
我が家では冬になると外気温、すなわち室温(笑)に合わせてイラストのように上から順に衣類を重ね、寒さに備えます。実際にはこれに加えてさらにネックウォーマー、ニットキャップ、マスクなどを併用します。
しかし寒いとはいえあくまで屋内ですから、完全に屋外用の上着を着るのはなんとなく気持ちがよくない。上の図の中の青い背景色のものは屋内で着ることはほとんどありません(トムは時々着てますが)。
最後の一枚だけ残して重ね着して屋内で過ごし、外に出る時に羽織る、って感じですかね。
ちなみに、このイラストの中で分類名(英語)を黄色くハイライトしているのが僕が持っているモノです。
こう見ると、家の中で着るものはある程度カバーしているけれど、外で着るものは一択(*)、という状況であることが分かります。
ダウンジャケットを検討してみた
このイラストを何の気なしに描きはじめたのが本エントリーのきっかけだったんですが、眺めてるうちに「冬のアウトドア用のアウターが欲しい」という気持ちがふつふつと湧いてきました。
冬のアウトドア用のアウターとして買ったのは、5年前のPatagoniaのPiolet Jacket(ピオレットジャケット)が最後。
現在のPiolet Jacket。僕のは青と紺のツートンです(画像出典:Amazon)
フードが襟と別に立ち上がるデザイン、袖部分が二重構造で一定の防寒性能、高い防水透湿性能(GORE-TEX)。機能的にもデザイン的にも満足していますし、ダメージも少ないのでまだまだ現役です。
それなのに、別の新しいアウターが欲しいと思ったのは、前述のように屋外用のアウターが一つしかないというのもありますが、これを買った独身時代と今とでは、生活が全然違うからです。
とにかく、パッと羽織れる、Tシャツしか着ていなくてもそれだけで十分に暖かい上着が必要になったんです。
例えば、朝。6時前に起きてマシューの散歩に行く時、何枚も何枚も重ね着するのはかなり面倒です。例えば、夕方。娘を迎えに行く直前は夕食の準備や風呂掃除をしていることが多いので少し薄着になっていることが多く、時間ギリギリになってしまって急がねば! といった時に1枚ずつ重ね着するのはこれまた実に面倒。なんです。
めちゃくちゃ寒くても、雨でも雪でも、それひとつ羽織ればOKというジャケットになると、防水透湿性のある素材で覆われたダウンジャケット、という結論になります。
Patagoniaの「プリモ・ダウン・ジャケット」や、THE NORTH FACEのマウンテンダウンジャケットのような製品です。
ダウンと化学繊維
ダウンの製品の購入を考える時、動物の福祉や虐待に関する問題が気になる方も多いと思います。
1930年代にエディー・バウアーが発明したダウンジャケットの原料となるダウンは、食用の鳥の羽毛を屠殺後に機械でむしる「マシーンピッキング」と、生きた鳥から採集する「ライブハンドプラッキング」の2つが主流(*1)です。
「ライブハンドプラッキング」、生きた鳥から繰り返し何度も羽毛をむしりとるこの方法は、YouTubeなどでその残虐さが広く伝わり、一般消費者にも問題意識が徐々に浸透しつつあります。
羽毛を採集された水鳥たち(画像出典:FOUR PAWS International)
しかし問題意識が高まっても「健全なダウン」、すなわち「マシーンピッキング」によって採集されたことが証明され、また飼育環境・状況に問題がないか正確な記録を追跡(トレーサビリティ)できるダウンが使われた製品を探すことは、2018年の時点でかなり困難で、フィルパワーといったダウンの性能をアピールするブランドは多い反面、どのようなサプライチェーンを介して得たダウンなのかを公表しているメーカーは非常に少ないのが実情です。
またメーカーがそれに取り組もうとしても、サプライチェーンがあまりに複雑であるため実現が難しく、こうした点について問題意識の高いPatagoniaでさえ、2007年に本格的に取り組みはじめてから使用する素材が完全に追跡可能だと公表できるまでに、7年以上の年月を費やしています(*2)。
他にもユニクロやH&M、MARKS&SPENCERといった企業が非人道的な方法で採集されたダウンを使わないと公表しています(*3)。
時間がかかるということはコストがかかるということで、こうした取り組みを全ての企業がすぐにできるわけではありません。その企業のダウン製品(を含む、あらゆる動物)に対するポリシーが明確にされていなくても、それが即、非人道的な方法で採集された原料を使うことをよしとしているという姿勢を示すものではありません。
しかし、その製品を買う前に、企業がこの点についてどのような立場をとり、態度を示しているかを確認するのは、現代を生きる僕たちにとって最低限必要なことの一つに思えます。
化学繊維という選択肢もある
ダウンのトレーサビリティを確保できないからといって、企業に打つ手がないわけではないようです。
そう、ダウンを使わない、という方法です。
ダウンに代わる化学繊維はすでに多く発表されています。アウトドアメーカーの場合、モンベルの「エクセロフト」、Patagoniaの「プルマフィル・インサレーション」や「フルレンジ」などがありますね。
なかでも、一番知名度が高いのはおそらく「プリマロフト」です。
1980年代にアメリカで発明されたプリマロフトは、軽くてかさばらず、暖かく、濡れても保温性を失わないという、ダウンと化学繊維の長所を併せ持つハイテク素材で、アウトドアメーカーだけでなく、多くのアパレルメーカーが素材として採用しています。
ダウンのように臭いがなく、ホコリもでづらいので布団にも適しているようです。
ただ調べてみると、プリマロフトにも様々な種類やグレードがあり、また、ダウンとミックスされていたりその他の素材と組み合わせて使用されていたりと、一口にプリマロフトの製品はこう、と言いづらい状況です。これはダウンでも同じですが。
そして、化学繊維はマイクロファイバー(繊維状のマイクロプラスチック)として海中を汚染して、環境や魚、最終的には人間に戻ってくるというリスクもあります。
万能なものはないんですね。
.
さきほど「めちゃくちゃ寒くても、雨でも雪でも、それひとつ羽織ればOKというジャケットになると、防水透湿性のある素材で覆われたダウンジャケット」という結論になると書きましたが、たとえば同じPatagoniaでは、ダウンを使わない、シェル+マイクロパフ(プルマフィル・インサレーション)という組み合わせの製品もあるようです。
マイクロパフ・ストーム・ジャケット(画像出典:Patagonia)
また、これはコメントでfogさんに教えていただいたのですが、Wild ThingsにeVentのシェルにPRIMALOFTのインサレーションというスペックを持つデナリジャケットという製品があるとのこと。
つまり、結論は一つじゃなかったってことですね。
これまで僕の頭の中には、暖かい衣類=ダウンジャケットという固定観念がありましたが、少し見方を広げて、製品を探してみる必要がありそうです。
.
読み返してみると、どうも説教臭い内容になってしまいました(汗)。
「あんた、なんでダウンなんて着てるんだ?!」なんて、動物愛護が行き過ぎて過激になり、他人を傷つけてしまうなどの行動をとってしまうのは本末転倒。
しかし、今の子どもたちが大きくなる頃、「え? 鳥の羽毛をむしってジャケットや布団に使ってたの? なんて残酷な!」と言われるようになっているかも知れません。
ちょっとした消費行動にも勉強が必要な時代ですし、でもそれが比較的かんたんにできる時代でもある。どこまでやるかは自分次第ですが、その行動が子どもの未来へとつながっていくことを考えると、できることはやっておきたいなぁと思ったりも。
あ、最後まで説教臭くなってしまいました。。
* Mountain Hardwareのシェルは、最近劣化してシェルとしての機能が落ちてきたので除外
*1 2つの手法の「正確な割合は不明だが、ライブハンドプラッキングが全体の1%未満だという報告がある一方、2009年のスウェーデンのテレビ番組CBS5で報道されたライブハンドプラッキング問題のドキュメンタリー[8]では、ライブハンドプラッキングの割合が、総供給の50~80%かもしれないと報告している。」(「」内はWikipediaより引用)。
*2 Patagonia 「トレーサブル・ダウン・インサレーション」
*3 ユニクロの情報は次のサイトを参照(苦しみ続ける動物達の為に◆さっち~のブログ◆「衣類の為に苦しむ動物達「ダウン」消費者の声が届くユニクロ」、動物の解放「ユニクロのダウンは、ほかのダウンより、マシなようだ。」。ただし、ユニクロ発の正式な情報公開は見つかりませんでした。H&M「H&M group’s Animal Welfare Policy」、MARKS&SPENCER「What is your animal welfare policy?」
参考記事
・モンベル 「はじめての山歩き 【登山の基本装備・秋冬編】」
・働きバチが利己的になるのはオスの遺伝子のせいだった!『「利己的』な王様と『利他的』な女王と自由のない働きバチ」
・NPO法人アニマル・ライツ・センター「ダウンの作られ方」
。moderate 「ダウンと化繊の長所を兼ね備えたpatagonia Micro Puff シリーズ(パタゴニア マイクロ パフ シリーズ)」
・OUTDOOR GEARZINE「比較レビュー:雪山アウトドアの心強い味方、ハードシェルジャケットを着比べてみた」
・NIKKEI STYLE 「ダウンを超えた? 進化する「化繊綿ウエア」
・PRIMALOFT
・Patagonia「プリマロフト® インサレーション」
こんにちは
何時も興味深く拝見させていただいております
暖かいアウターということで記事を読ませていただきました
パッと羽織って暖かいアウターですが私はwild thingsのデナリジャケットを去年から着用しておりますがものすごく暖かいです。
仕様としてはeventとプリマロフトの物です。
気温5度の時は綿下着、中厚手メリノウールベースレイヤー、シャツ、アウター
気温0度前後の時はシャツをポーラテックのプルオーバーに
それ以下はポーラテックの上にインナーダウンを着用すると問題ないように思われます
検証は各気温にバイク走行中での着用がもとになります。
以前はゴアテックスにインナーダウンを着用していましたが暖かいという感覚には私なりにはなりませんでした。
プリマロフトもピンきりというのはおそらく仰る通りで、同素材のノースフェイスのパンツも持っていますがロフト(嵩?)が少なくあまり暖かいとは思いませんでした。
何かご参考になれば幸いです!
fogさん、コメントありがとうございます 🙂
非常に参考になる情報をありがとうございます! 僕も若い頃は季節問わず単車に乗っていましたので、気温0度で寒さを感じないということの凄さに驚いています(でもきっとグローブしている手は寒いですよね?笑)。単車に乗っていて寒くないということは、それを着用してじっとしていてもまず寒くないですよね。すごい保温+防寒力だと思います。
Wild thingsはファッションブランド寄りのアイテムなのかなぁと勝手に想像して、これまで僕の購買行動、そしてこのブログでも触れてこなかったのですが、eVent + PRIMALOFTのデナリジャケット、すごくいいですね! ぜひこの記事にも(僕の備忘録として)写真と名前を掲載したいと思います。
素敵な情報をありがとうございます!
こんにちは
wild thingsは他のアイテムを持っていませんがファッション寄りというのが僕の認識でもありましたが、街着と兼用ということもあり購入となりました。
あまりに暖かいので奥さんにも勧めて、公園遊びや雨が確定している寒い日などに役立っています。
焚き火の時は距離を取るようにしてますがw
バイクのグローブは薄いメリノウールの手袋に冷凍庫作業用の格好がアレの手袋で現在のところ雨にも風にも強いなので不自由なく過ごせております
格好は青くて本当にアレですが!
それでは失礼します〜
これからもブログの方楽しみにしております
fogさん、コメントありがとうございます!
> ファッション寄りというのが僕の認識でもありましたが、街着と兼用
なるほど、そうでしたか。街着兼用ですとコスパも高まりますしね! 🙂
手袋もいろいろ工夫されてるんですね。fogさんもそうですが、コメントくださるみなさんは本当にいろいろ調べられていてよくご存知だし、工夫もされていて、いつも僕のほうが勉強させてもらっています。
のろのろ更新のブログですが、またぜひお越しください!
そしてもう年末です。どうぞご自愛のうえ、よい年をお迎えください〜 🙂