雑種地と市街化調整区域
仲良しのイトコの結婚式やら、年度末ということもあって結構バタバタしていた2〜3月。その割にキャンプはしっかりしてたけど、肝心の家探しができてなく。やっぱりショックで諦めがついてなかったこともあるんだけど。気持ちを切り替えて、土地探しを再開。
トム(妻)と一緒にお互いスマホやPCで調べていたところ、トムが「ここイイんじゃない?」とある物件(仮に土地Aと呼びます)を指して言いました。
- 鳥取市内
- 大きな湖と緑地がそばにある
- 小学校から大学まで近所にある
- 商業地も近い
- 220坪/800万円弱(坪単価 約3万5000円)
- 雑種地
- 市街化調整区域
「ほう。面積は十分だし、環境も良さそうだね〜。ただ、この雑種地ってのと市街化調整区域ってのが気になるね」
というわけで調べてみました。現地確認して大きな問題がないようなら、キャッシュで即決!とか考えつつ。
ところが…。
雑種地とは
雑種地とは、土地を登記する際に使用できる地目(分類)の一つで、法律によって以下の23種類と定められているそうです。
第九十九条 地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする
(引用:不動産登記規則第99条)
具体的な用途が示されている22種類に当てはまらないものが、23番目の雑種地に寄せ集まってくるみたい。22種類もなんだか一昔前のものという気がしますね。
この雑種地についてはいろんな人が僕たちと同じく「これなんだ?」と疑問を持ったらしく、検索すると丁寧に解説してくれているページが多数出てきます。が、やはり雑種というだけあって定義は「22の地目に当てはまらない」というくらいで、「こんな土地が雑種地です」というのはなかなか説明しづらいみたいです。例としては、下水処理場とか野球場、ゴルフ場、鉄塔が建ってるところとか、本当に様々。
雑種地として登記されている土地に家を建てたりしても問題はないようですが、なぜか銀行からお金を借りる時に減額されたりする可能性があるとか。ふむふむ。
市街化調整区域とは
許可がないと家は建てられない?
さて、もう一つの懸念ポイントがこちら。調べてみると、鳥取県のホームページに以下のような文章が。
市街化を抑制すべき市街化調整区域においては、開発行為を伴わない建築行為等についても規制の対象とされており、建築物の新築、改築若しくは用途変更又は第1種特定工作物の新設を行う場合には、あらかじめ許可を受けなければなりません。
(引用:鳥取県 都市計画法に基づく開発許可制度)
あらかじめ許可を受けなければならないとな?
では許可を得るには? と鳥取県市街化区域と一体的な地域等に係る開発許可等の基準に関する条例や市街化調整区域内の建築等Q&Aを読んでみたところ、えらいゴチャゴチャと分かりづらいことが書いてありますが(後者は分かりやすいです)、要するに、僕たちのようなその土地に縁もゆかりもない人間が買って住居を新築することは許可できない、と。
だから、土地の価格もとびっきり安いわけです。
そもそも市街化調整区域って何だ?
では、この市街化調整区域って何だろう? なんで存在してんだろう? という疑問が湧いてきます。
一言で言えば、都市がスプロール(無秩序に拡大)することを抑制する、ためです。
高度経済成長期の日本では急速に人口が増え、これまで農地や山林だった安い土地が開発され宅地となって家が建ち、販売されていきました。これが計画的にではなく、無秩序に拡大していったのです。これをスプロール化と言います。
一瞬「別にいいじゃん?」と思うわけですが、行政はそこに上下水道などの生活インフラを整備する必要が生じますので、市街地から離れた地域に無秩序に、飛び石状態で住宅が建つとインフラ整備に膨大なコストがかかるわけです。
参考:鳥取市公式ウェブサイト
しかしここで一つの疑問が
市街化調整区域に関する考え方は確かにリーズナブルです。問題としていることも、解決策としても理解できます。
が、なぜ土地Aの地域が市街化調整区域である必要があるのか?と。
土地Aのあるエリアは、鳥取市を俯瞰しても中心地からそれほど離れている場所ではありません。実際、車で15分もあれば鳥取市の様々な場所にアクセスできる好立地にあります。新しい家も結構な数で建っていますし(要件を満たしたのでしょう)、何の事情も知らずにそこを訪れても「市街化を抑制するべきエリア」とは気づかない、本当に普通の住宅地です。
それだけの住宅地ですから、生活インフラはすでに整備されているはず。過去にスプロールした結果その町があるのかも知れませんが、ではいつかそのインフラが老朽化して改修が必要になっても、市街化調整区域内だからという理由で、インフラ維持のコストを行政は負担しないということなのでしょうか?
もしそうでないなら、むしろ制限を解除して宅地化を進め、かかる費用の恩恵にあずかる人口を増やしたほうがメリットがあると考えるのですが、どうでしょうか?
儚い希望
どうしても土地Aに家を建てたい! と思っているわけではなく、何でこうなってるんだろう? という疑問からこの記事を書くに至ったわけですが、もしあそこにキャンプハウスを建てられるとしたら、土地Aのある地域が、市街化調整区域から市街化区域に変更されるしかありません。
が、「現在の人口の及び産業活動の状況から、今後はコンパクトなまちづくりの方針に従って市街化区域の拡大は原則的には行わない」と鳥取都市計画区域都市計画区域マスタープラン(整備、開発及び保全の方針)の12ページ目にありますので、その希望はかなり儚いと言っていいでしょう。
(T_T)