スイスに行ってきた話 その2 ルツェルン編
チューリヒ編に続く、スイスに行ってきた話の2回目は、スイス中部の街「ルツェルン」編です。
ルツェルンという名前を聞いてピンとくる人は、きっとスイス通の方なのではないでしょうか。少なくとも僕たちは今回の旅行まで、その名前を聞いたことさえありませんでした。
スイスに行くことを決め、その一番の目的がエフちゃんとエフちゃんの家族に会うということで、彼女たちが暮らすヴァイニンゲンに近いチューリヒからスイス入りすることはすんなり決まったのですが、せっかく行くわけですから、「これぞスイス!」というような、つまりアルプスを体感できるような旅もしてみたい。
しかし、僕のスイスに関する知識は非常に浅薄だったため、行き先をなかなか決めることができませんでした。
マッターホルンを見よう!
時折、新聞広告で見かける、旅行会社が企画するツアーなどを参考にルートを検討してみるのですが、短期間でたくさんの景勝地を見るために毎日移動するような旅は好みではなく。もちろん、「スイスグランドトレインツアー」※のようなスイス横断の鉄道の旅はスイス旅最高峰にして王道でもあるのですが。
であれば、もうピンポイントで「ココ行こう!」みたいな感じで一か所に決めるのはどうか……スイス旅行の立案当初は「やっぱりスイスに行くなら、マッターホルンは見てみたいよねぇ」などと話していたので(それしか知らないから)、「マッターホルンを見る」を目的に据える案が浮上しました。
マッターホルンに行くには、スイス南部の街「ツェルマット(Zermatt)」を拠点にするのが常道。
ツェルマットは標高がおよそ1600メートルあり、僕たちが旅行した3月の日中の平均気温は0度を下回ります※。有名なマッターホルン展望台はいくつかありますが、標高が3000メートルを超えるものが多く、全体的にかなり高地で滞在する旅になります。
幼い娘を連れての初めての海外旅行で、万が一高山病になってしまったり、非常に寒い日が続くなどするリスクを考えると、ツェルマット一本釣りの旅行計画はかなり厳しいのではないか。情報収集するにつれて、そう考えざるを得なくなってしまいました。
ルツェルン案が急浮上
ツェルマットのような南部、ユングフラウのように標高の高過ぎたりする場所は避け、チューリヒから無理なく行ける場所。3月中旬でも雪の影響が少なく、交通手段が安定している。といった条件で地図を眺めていて浮上してきたのが、街全体が世界遺産に登録されている古都市で、スイスの首都であるベルン(Bern)と、チューリヒからベルンに向かう途中にある街、ルツェルン(Lucern)です。
ただ、その時はどちらにも決め手になるような観光資源がないように見え、決めかねていました。
出典:スイス政府観光局
そんなある日、トム(妻)が買ってきたスイスの旅行本。その名も「スイス」。
画像出典:Amazon
この中にルツェルンから日帰りで行ける登山プランが2つ、リギ山(Rigi)とピラトゥス山(Pilatus)が掲載されていて、マッターホルン展望を諦めた僕には、それらがとても魅力的に映りました。
そんな時にスイスのエフちゃんからメッセージが届き、彼女のママ、アンお母さんが考案したスイス旅行プランが添付されていました。その中になんとルツェルンへのドライブとリギ登山が書かれているではありませんか。
リギ山(画像出典:ExplorAlp)
地元民が計画に加えるような場所ならば、ルツェルンもリギ山も、これは間違いなかろう! もう出発も近づいていたので、リギ登山以外に何をするかは具体的に決まってないまま、ルツェルンにホテルをとりました。
スイスに入ってから紆余曲折あり※、リギではなくピラトゥス登山へと変更になったのですが、これが本当に良い判断でした。ピラトゥスでの体験は本記事後半で。
ルツェルン
ルツェルンは、ルツェルン州に属す5つの基礎自治体の1つで、州都。人口は約8万人。スイスの東西ちょうど中央に位置しています※。
チューリヒからは、SBB(スイス連邦鉄道)で1時間弱。
スイスの鉄道は改札がありません。チケットは車内を巡回するSBB職員がチェックします。乗客はオンラインで買ったチケットをスマホに表示して提示するか、駅で買った切符を見せて確認してもらいます。
SBBの車窓から眺めるスイスの景色は素晴らしく!と言いたいところですが、実は往路、チケットトラブルが生じ※、SBB職員とやりとりしつつの窓景撮影となってしまったので、満足な写真が撮れず(涙)。帰りは少し動画も撮りましたので、ご覧いただければ。ワオ!という感じではないのですが、ずっと見ていても飽きない、美しい景色でした。
とまあ、こんな景色を眺めながら1時間、ルツェルン駅に到着。
ルツェルン湖畔
まずはホテルにチェックインしようということで、ルツェルン湖のほとりを歩きながらホテルへ向かいます。
ルツェルン湖のほとりにある公園ではたくさんの地元民がくつろぎ、僕たちのような観光客も景色に見惚れ、それぞれの時間を楽しんでいます。
ペタンクを楽しむ地元の人たち
湖の向こうにアルプスが見えます。この環境が日常なんて
市街地を歩いていて驚いたのは、自動車と自動車のレーンの間に自転車専用レーンがあること。
そしてそこをみなさん、普通に走ってる(そりゃそうでしょうが)。子供を乗せたチャイルドトレーラーを引っ張りながら走っている人も。
自転車に乗ってる人の多くはしっかりヘルメットを着用していました
後日、アンお母さんに聞いたところ「チューリヒも同じですよ」と言っていたので、スイス全体で同じ交通事情なのかも知れません。
HOTEL HOFGARTEN
駅から歩いて10分ほどにある、今回の僕らの宿「HOTEL HOFGARTEN」。
スイス〜て感じの外観。それで選んだところもあり笑(画像出典:Tripadvisor)
僕たちが利用した部屋は、3ベッドの寝室とダイニングスペース、食器付きのキッチン、バスルームという構成でとても広々としており、快適でした。
予約はBooking.comを利用しましたが、掲載されていたレビューのとおり、館内は清潔でスタッフも親切。朝食もとても美味しかったです。
ビュッフェ式ですが、注文すると目玉焼きかスクランブルエッグを焼いてくれます。これが本当に美味しかった(ので、焼いてくれた人に思わずそう伝えたくらいです)。
カペル橋の周辺を散歩
ルツェルンで迎えた最初の朝、この街で最も有名な観光地の一つ「カペル橋」と、橋がかかるロイス川の周辺を散策しました。
カペル橋は1333年に建造されたヨーロッパ最古の木造橋です。1993年の火災で多くが消失しましたが、すぐに再建されたようです。この事実を知らなければ、「確かに古い橋だ」という感想で終わるのですが、確かに思い返すと、すごく古いように見える場所とそうでない場所があったような。
おそらく、上の写真は新しい(焼失して再建された)部分、下の写真が火災を免れた古い部分です。
絵が残っている部分が古くから残っている箇所であると思われます
橋の途中にある八角形の石造りの塔は、かつては牢獄、拷問部屋として使用されていたとのこと。中世ヨーロッパの拷問なんて、想像しただけで背筋が凍ります……。
ちょうどこの日はロイス川の両岸で朝市をやっていて、野菜や果物、生花、パンなどを売っていて賑やかでした。
ロイス川のほとりを歩いていると、なにやら城壁のようなものが。
「城壁かねぇ」なんて言いながら離れてしまったんですが、あとになって調べたところ、これはムーゼック城壁という、1400年に完成した現存するものとしてはスイス最長の城壁でした。以前はぐるりとルツェルンを囲むように建っていたようです。9つの塔があり、そのうちの一つの時計塔は1535年から現在まで稼働しを続け、ルツェルンの町に時を告げています。城壁の上は歩けるようになっていて、町を一望できる眺望はかなり良きと。行っとけば良かった〜(帰国後に先述の「スイス」本を見たら、普通に紹介されてました…)。
瀕死のライオン像
この散歩とは別のタイミングで行ったのですが、「瀕死のライオン像」という石像も見に行きました。
1792年にパリで革命家がチュイルリー宮殿を攻撃した際、王家を守り亡くなったスイス警備兵たちのためにつくられた石像です※。実際に見てみると想像していた以上に大きく、また非常に精緻に掘り込まれた作品で、思わず見入ってしまいました。一見の価値はあろうかと思います。
ピラトゥス山に登る
さて、いよいよ、ルツェルンに滞在することになった大きな目的の一つ、山登りの話です。
先にも書いたとおり、当初はリギ山に登る予定でしたが、エフちゃんのパパ、ダニエルお父さんの勧めなどもあってピラトゥス山に変更しました。
ダニエルお父さんが僕たちに勧めてくれた理由、それはズバリ「行き方が簡単」だから!…… その行き方はこうです。
ホテル → バスで「ツェントルム ピラトゥス(Zenturm Pilatus)」へ行く → 徒歩でクーリンス(Kriens)のゴンドラ駅へ → 中継駅フレクミュンテック(Fräkmuntegg)を経由して、ゴンドラに乗ってピラトゥス山頂(Pilatus Kulm)へ
季節がよければ、帰りは登りとは別のルート、ピラトゥス鉄道を使って下山したいところですが、3月中旬は雪のため運行休止中。よって帰りも同じルートを使います。
最大傾斜48%のピラトゥス鉄道(画像出典:スイス政府観光局)
まず、ホテル近くのバス停からツェントルム ピラトゥスへ行けるバスを、ホテルからもらった観光ガイドに載っているバスの路線図でチェック。
この路線図内の赤い線=路線1を使えば、ホテル最寄りのバス停からツェントルム ピラトゥスへ乗り換え無しで行けることが分かりました。
塗りつぶした赤い丸付近がホテル、赤線の円が目的のバス停です
ちなみに、路線図内で白くなっている区間(10*)を運行するバスであれば、同じくホテルからもらったクーポンで期間中、何度でも乗ることができます。
ホテルからもらったバスクーポン
滞在地を決めかねてベルンのホテルを調べていた時、ベルンにも同様のサービス※があったので、スイスの各都市で同じように交通機関が無料または安価で利用できるんでしょうね。
さて、行き方が分かったところでピラトゥスに向かいます。
ホテル最寄りのバス停にやってきた「1」と書かれたバスに乗ります。乗り換え不要なので、方向さえ間違えなければ目的地に着くはずです。
(注!)撮影地はホテル最寄りのバス停ではなく、目的地のツェントルム ピラトゥスです
鉄道と同じで、バスも、乗車時に支払いをしたり整理券を受け取ったりする必要はありません。ただ乗って、降りるだけ。ただしドアは自分でボタンを押して開く必要があります(それを知らず、しばらくドアの前で佇んでおりました……)。
乗車中、バスのスタッフがチケットの確認に来たら、ホテルからもらったプリントを渡してチェックしてもらいます。僕たちが乗っている時は、行きも帰りも、チケットチェックはありませんでした。
目的地までは14ほどのバス停を経由、と聞くとかなり遠方に感じますが、ルツェルンのバスはバス停間がかなり短く(100メートルほどしか離れていないものも)20分もかからずツェントルム ピラトゥスに到着。
(注!)このバス停は下り方面(ルツェルン市街地へ戻る方向)のバス停です
バス停からゴンドラの駅までは、ちょこちょことサインが出ていますので、それに従って歩いていけばOK。10分ほどで到着しました。
前日にオンラインでゴンドラのチケットを買っていたので、チケット売り場に並ぶことなく、QRコードをかざしてゲートを通過し、自分たちでゴンドラに乗ります。案内係はいません。
クーリンスの出発駅からピラトゥス山頂までは2つのゴンドラに乗ります。まずは4人乗りの小さなゴンドラで30分ほどかけて中継点のフレクミュンテック(Fräkmuntegg)駅まで上がり、大型のゴンドラに乗り換えます。そこから山頂までは4分足らず。
フレクミュンテックに掲げてあったマップ
クーリンスの駅を出て、ゴンドラがゆっくりと上がりはじめました。
標高も上がり、街の景色から徐々に山の景色へ、そして雪景色へと変わっていきます。
ゴンドラとの比較で、木がどれだけ大きいか分かりますね。
森林地帯を抜け視界が開けると、見えてきました、ピラトゥス山!
中継点のフレクミュンテックに到着!
で、この眺望!
もうここまででもいいんじゃないかと思えるほどの感動だったのですが……いや、きっと山頂にはこれを超える景色が待っているはず!
スタッフは毎日この景色を眺めているわけですよね、うらやましい
フレクミュンテックまでのゴンドラは4人乗りの小型のものが延々と運行を続けていますが、ここからは大型のゴンドラが15分おきに発着します。
ここから山頂までは支柱がなく、3本のケーブルだけが頼りです。
出発時刻を迎えてゲートが開いたので、ゴンドラに乗り込んで始動を待ちます。タイミングが良かったのか、乗客は僕たち3人以外には6人グループだけで、進行方向の最前列という最高のシートに陣取ることができました。
眼前に迫るピラトゥス山の巨岩に圧倒されながら乗ること数分、山頂に到着!
建物はゴンドラの駅と、ホテル(Hotel Bellevue)が同居しています
ゴンドラを降り、駅を出て、僕らの前に広がった景色がこちら。
わー!
としか言えません。
ちょっとだけ動画も撮りましたので、見てみてください。
動画を撮影した場所から歩いてもう少し高いところに上がることができ、そちらは正しく360度のパノラマビューでした(感動のあまり撮影を失念しました)。
快晴、そして微風と天気にも恵まれて、いつまでもここで(ビールを飲みながら)山々を眺めていたい……そう思いましたねぇ。
山頂には、その願いを現実のものにできる施設、ホテルが2つあります。
先の写真にあるホテル ベルビュー(Hotel Belleveu)と、ホテル ピラトゥス クルム(Hotel Pilatus Kulm)です。
ホテル ピラトゥス クルム
ホテル ピラトゥス クルムは、なんと1890年に建てられたホテルで、1999年にルツェルン州の保全指定建造物に指定されたとか。
この絶景を眺めながらゆっくりとした時間を過ごせるなんて、ぜひ泊まってみたい!と思うのですが、ゴンドラが故障したとか、ホテルが停電したとか、何か一つトラブルがあればサスペンス映画にでもなりそうなとんでもなく恐ろしい状況になりそうで、心配性な僕には心理的ハードルが高いです(笑)。
ホテルとは少し離れた尾根のような場所には教会もあります。
しかし、ほんと、ホテルとか教会とか、よくこんなところに建てましたよね。想像力、そして実行力がスゴ過ぎる。
景色を眺めていたら、アルプスホルンの演奏が始まりました。
ん〜、贅沢なひととき過ぎました。
・・・
というわけで、スイス旅行のルツェルン編でした。
ルツェルンには足掛け3日間滞在、トムにとってかなりお気に入りの旅行先となったようです。スイスには素晴らしい街がたくさんあると思いますが、ルツェルンもその中の一つで、おすすめできる観光地です。機会があればぜひ行ってみてください。
さて、「スイスに行ってきた」のその3は、スイスでの交通手段について書いてみたいと思います。
- 簡単に説明すると、ホテルから近かった、という理由になります(笑)。
- wanderlog 「ツェルマット, スイスの3月の天気」
- wiki 「ルツェルン」
- トラブルについてはまた別記事で
- 地球の歩き方「ムーゼック城壁」
- スイス政府観光局「ライオン記念碑」
- プリントという前時代的なルツェルンと違って、ベルンはアプリでした。