キャンプ×ワーケーションについて考えてみた

鳥取砂丘エリアにある人気のキャンプ場「柳茶屋キャンプ場」のそばに、2022年3月、ワーケーションやインキューべションの拠点施設「SAND BOX TOTTORI」が開業予定、というニュースが地元紙に掲載されていました。


「SAND BOX TOTTORI<完成予定図>」(画像出典:鳥取市

「SAND BOX TOTTORI」の建設予定地のすぐそば、廃業した宿泊施設の跡地には高級リゾートホテルの開業が予定されています(*1)。

鳥取砂丘 ワーケーション SAND BOX TOTTORI
赤線で囲ったのが「SAND BOX TOTTORI」の開業予定地

鳥取県最大の観光資源の一つである鳥取砂丘は、周辺に美術館や土産物店くらいしかなく、周遊型観光コンテンツの一部に過ぎません。

そこに待望のリゾートホテルができ、滞在型観光地となる(可能性が生まれる)わけですから、リモートワークの普及もあって認知が進むワーケーション向けの施設が企画されるのは(まだ当該施設について公開されている情報が少ないので何とも判断しづらいところですが)、時流的にはアリなのかな思います。

スポンサー広告




ワーケーションとは

ワーケーション(Workcation)とは、ワーク(Work)とバケーション(Vacation)をくっつけた造語。仕事しながら休暇も楽しむ、みたいな感じでしょうか。

僕は在宅勤務歴が積算で10年近く、以前勤めていた会社も長期休暇(と言っても2週間程度ですが)や条件付きで在宅勤務を許可していたので、オフィス以外で働くということにかなり強い免疫を持っています。と言うより、オフィスで働くことができなくなってきてる気がします(笑)。

また、PCを持ってキャンプ場に出かけてそこで仕事をしたりと、比較的場所を選ばず仕事をしてきた経験があります。

一方で、いつでも自分の判断でそれが実施可能なこともあって、ワーケーションについてあらためて考えたり調べたりすることはこれまでほとんどありませんでした。

今回、「SAND BOX TOTTORI」の記事をキッカケに、ワーケーションに関する幾つかの調査資料やニュース記事、ブログなどを読んでみました(文末参照)。

ワーケーションは日本人に合っている

もしもワーケーションが普及すれば、観光や宿泊業には当然追い風になるし、「SAND BOX TOTTORI」のようなシェアオフィス、コーワキングスペースを提供するビジネスは発展していくでしょう。

では、普及するのかどうか。

それは分かりません(笑)。ですが、休暇中に仕事もするワーケーションは、仕事を重視する日本人に合ったスタイルではないかと考えています。

西欧諸国の人々のように、1か月近く完全に仕事から離れてのんびり休むということが日本人にはなかなかできませんし、したいと思ってる人も少ないんじゃないでしょうか。

実際、先述のアンケート結果を見ると、ワーケーションにおける仕事と休暇の割合について「仕事が6〜7割」「8割以上」と希望する回答が半数近くを占めています(*2)。みなさん、本当に仕事が好きです。

とはいえ、休暇も必要。ワーケーションであれば、これまで仕事と休暇を完全に切り離さなくてはならず、そのため休暇がとりづらかった人でも、例えばリゾートに長期滞在し、午前中は仕事、日中はのんびりと過ごしたり観光を楽しみ、夕食前にメールをチェックして夜はリラックス、とか、地方にある実家に帰省して、子どもは祖父母に見てもらい親は近くのコワーキングスペースで仕事、といった休暇スタイルが可能になります。

つまり、週末や定められた祝日に依らず、会社や部署、個人レベルで仕事を調整して休暇をとることができるようになるわけです。そもそも、カレンダーで定められた休日・祝日ではなく、個別の仕事に合わせてスケジュールした方が不要な残業や休日出勤といったことが減り、効率が良い業態も多いはずです(*3)。

これが拡大すれば、年末年始やお盆、祝日が重なる大型連休などに出かける人が減るので、ある時期だけに人流が集中して観光地や高速道路が混雑したり、宿泊先が確保しづらい、高騰した旅費を負担しなければいけないといった状態が緩和されていきます。

また、繁忙期と閑散期の境界が薄まる観光業・宿泊業は従業員の確保・調整がしやすくなり、被雇用者にとっては通年安定して働くことができるようになります。

星野リゾートの星野佳路社長が常々発言、提唱している「休日の分散化」が実現するわけですね(*4)。

それぞれが自分の都合に合わせて休みをとることで国民の行動が分散し、宿泊費が均平化して旅費が抑えられ、且つ仕事も必要に応じてできるので旅行期間も長期化、滞在する地域で過ごし楽しむ時間も増え、地域の経済にも貢献……というバラ色のシナリオが見えてきます。ちょっと机上論が過ぎますかね(汗)。

職場と教育のDXが必須

そもそもの話ですが、ワーケーションが可能なのはリモートワークできる人のみ。

技術が進歩して、DX(Digital Transformation)を進めることができる進めるべき分野なのに、しかし変化するのが嫌で昔のやり方に拘泥する会社や組織が多いと聞きます。

リモートワークが可能な職業はできるだけ導入、且ついわゆるWork From Home(WFH)=在宅勤務ではなく、どこで仕事しても成果を出せれば良いといった考え方にシフトしていく必要性もあります(*5)。

また、今回参照したアンケート結果は、リモートワークをしている/ワーケーションの経験がある人に対して実施されたものですが、その回答者の大半は30〜50代、子育て世代も多く含まれていました(*6)。

しかし、子どもが就学している場合は当然学校に通う必要があるので、年末年始でもお盆でも連休でもない時に家族そろって長期で休暇を楽しむ、ということが難しいわけです。

教育のDXを推進する「GIGAスクール構想」が掲げられてはいますが、現時点の文部科学省の動きを見ていると対面授業は継続される見通し。児童1人に1つ配布されたタブレットを使っていつでもどこでも教育が受けられる、というワケではなさそうです。

親の仕事も子どもの教育も、そろってリモート化されることが、ワーケーション推進の要素の一つになる気がしますね。

キャンプ場でのワーケーション

さて、キャンプ場でワーケーションするのはどうなのでしょうか。

アンケート調査結果では、「自宅や会社から離れた観光地(ホテル・旅館・キャンプ場等)」や「公園やキャンプ場などの屋外」といった分類()なので、キャンプ場でワーケーションしている人がどの程度いるのかは不明なのですが、個人的に考えていることは、次のとおりです。

一人でやるのはイマイチ

上に掲載した写真のとおり、これまで何度もキャンプ場や屋外にPCを持ち出して仕事したことあるんですが、オフィス(僕の場合は自宅)よりも効率的に仕事できたことは皆無(笑)なんですよね。

暑い/寒いの調整が簡単、いつでも冷たい/温かい飲み物が飲める、電源/電波の心配や不安がない、仕事環境が天候に影響を受けない、トイレにすぐに行ける……オフィスではごくごく当たり前のことですが、キャンプ場だとそうはいかないことも多く、いちいちストレスです。

リモートワーク/ワーケーション@キャンプ場なら、キャンプを主体にして、1つ2つ緊急のメールを捌くといった程度にとどめておくのがベストだと思いますね。

それでもやっぱりキャンプでワーケーションしたい! ということであれば、ロースタイルのチェアやデスクでなく、ハイスタイルで向かうのが良いと思います。後傾になるロースタイルは仕事には向きません。

やるならグループで

じゃあキャンプ場でワーケーションは全然ダメなのかと言われれば、そんなことはないと思います。

個人的にベストだと思うのは、新しいチームでブレストしたり、初期のチームビルディングに活用する、といった使い方ではないでしょうか。

ブレストに限らず、アイディアや意見を交換しあうミーティングでは、なにより参加者同士の関係性が大切。「なんでも自由に発言してください」と笑顔で言われていたとしても互いに信頼関係が結べていなければ、「冷笑されたらどうしよう」「否定されたらイヤだな」と心配になるものです。

キャンプ場でワーケーションする場合、テントやタープを設営しテーブルやチェアを並べるなど、自分たちで仕事場を設置する必要があります。これをチームで協力して実施することが、よいアイスブレイクになるんですよね。メンバーのそれぞれの特徴や個性も垣間見えると思います。

信頼関係とまではいかずとも、サイト(仕事場)設営が打ち解けた空気感を生み、また自然の中という高い開放感もあいまってよいブレストが行えるのではないでしょうか。

また、そうした環境でチームビルディングを目的としたミーティングやワークショップなどを行うのも良さそうな気がします。根拠はありませんが(笑)。

・・・

(おまけ)

この記事を書くにあたって情報収集するなかで、地元鳥取県のワーケーションに関するウェブサイトを拝見しました。正直、ちょっとダメでしたね。やっつけ感が凄いです。もう少しガンバレ〜。

*1 当初は2022年11月頃に開業予定でしたが、COVID-19の影響で2年延期(2024年末頃)されたことが報道されていました。参考:朝日新聞「開業約2年延期 鳥取砂丘のホテル計画 新型コロナ影響
*2 Otell 「【調査レポート】リモートワーク・ワーケーションに関するアンケート-1」 P24
*3 PRESIDENT onlinfe 「祝祭日数世界1位!日本人は休みすぎ!?
*4 日本経済新聞 「HISTORY星野佳路氏(19)休日分散を提唱
*5 これについては評価制度なども含めて会社全体が大きな変化を受け入れていかなければいけない深く広い話なのですが、この記事では割愛します。
*6 Cross Marketing社 【レポート】ワーケーションに関する調査(2021年3月) P5、Otell社 【調査レポート】リモートワーク・ワーケーションに関するアンケート P7
*7 Cross Marketing社 【レポート】ワーケーションに関する調査(2021年3月) P9、Otell社 【調査レポート】リモートワーク・ワーケーションに関するアンケート P11

aw

Live in Tottori-Pref, JPN. Love Camp, Sandwich, Coffee, Beer and Scotch on the rock. Pursuing Self-Sufficiency Life.

おすすめ

ご意見・ご感想をお聞かせください

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください